堀田善衛はこの本の執筆に40年かけた。
 
ひたすら堀田が明月記を順に読むだけだが、
読めば読むほど歴史のその日に入っていける。
どうしたらゆっくり読めるだろうかと、
惜しむように読んだ。
 
 
こんなことを書かれては、
ついamazonで検索してしまい、
しかも中古で1円。
喜んでいいやら悲しむべきやら。
 
 
日本語ではリアルをウツツ(現)といい、
ヴァーチャルをウツ(空)という。
 
古代日本では内側がくり抜かれた
土鈴のような、でも舌がない容器を吊るして、
そこに何かがやって来るのを待った。
これを「おとづれ」と言う。
 
ウツからウツツが派生する文化である。
 
 
そこから生まれた三夕のあの歌を
岡倉天心は「茶の本」でこう訳した。
 
I look beyond;
Flowers are not,
Nor tinted leaves.
 
On the sea beach
A solitary cottage stands
In the waning light
Of an autumn eve.
 
 
見渡せば花も紅葉もなかりけり
浦の苫屋の秋の夕暮れ