『世界ぐるっと朝食紀行』西川浩 新潮文庫 2007年 667円
 どこかのテレビで土曜の朝に世界の朝食を伝える番組があったのだが、どこの国でも新婚さん家庭を取材するせいか凝ったボリュームのあるものばかりだった。が、本書でも美味しそうだけれどボリュームのあるものが多く紹介される。日本も筆者の故郷の茶粥が紹介されているが、それは少なめだ。だけれど旅館などの朝食を載せたとしたらある程度はボリュームがあるだろうか。だけれどそれを全部食べるかというとどうだろう。一番よく食べていたのはやはりアメリカ人だった。バイキング形式ということもあり相当食べていたらしい。
 チャイはインドの紅茶かと思ったら、ここではトルコ風紅茶として紹介されていた。トルコの朝食は路上で手に入るものが多くあるようだ。モロッコ同様、スープとパンという「清貧の幸福」が定番のようだ。イタリアは昼が1日で一番重い食事を取るため、朝食は軽めのようだ。フランスはやはりクロワッサンとカフェオレ。デンマークはいわゆるオープンサンドイッチ。ドイツではウナギのたたき売りが紹介されていた。その写真を見ると映画『ブリキの太鼓』を思い出してしまった・・・。
 イギリスは池澤夏樹の『叡智の断片』にも登場したサマセット・モームの「イギリスでうまいものを食べようとおもったら朝食を二度しろ」が紹介される。確かに「イングリッシュ・ブレックファースト」はコンチネンタルと違いおかずもあり美味しい。イギリスには他に「朝食を食べぬような男とは結婚するな」という言い回しがあるそうだ。しかし他に、朝からロースト・ビーフが並んだりするものもあり確かに朝食が夕食のようだ。
 著者は釣りも趣味としているらしく、旅の途中でも釣りをする。スタインベックの『チャーリーとの旅』に出てきたという鱒とカリカリのベーコンを食している。読んでいるだけで美味しそうだ。
 メキシコは朝から名物のトルティーヤ。フィジーは名物のダロ芋。これは著者は喉がイガイガしたらしい。インドやタイでは食べ物に直接手で触れて食べる習慣だが、これが意外と快感だったようだ。
 マレーシアの皿代わりのバナナの葉。これはエコロジーだ。物の腐敗を遅らせ、毒が盛られると化学反応が出るらしく、物を包むといい香りがし、捨てても土に還る。
 モンゴルの馬乳酒はアルコール度数2度と低く、酸性の体をアルカリに変えてくれるという。韓国にも味噌があるのだが、日本のものとは違うらしい。香港ではレストランで謝々の代わりにテーブルを人差し指と中指でトントン叩いて感謝の意を示すらしい。
すべて美味しそうだったけれど、朝から沢山食べるには低血圧では無理そうだ・・・。