『若き詩人への手紙、若き女性への手紙』ライナァ・マリア・リルケ 新潮文庫 2007年 
 324円
 映画『天使にラブソングを2』で、ウーピー・ゴールドバーグ演じる音楽教師が、反抗的な態度を取るリタ・ワトソン(ローリン・ヒル)が実は歌うのが好きだけれど、母親からお金にならないことをするなときつく言われて悩んでいるのを知り、リルケのこの本を手渡し、何よりも歌うことが好きなら歌えばいいと助言するシーンに出てくるのだが、ちゃんと読んだことがなかった。
 リルケはフランツ・クサーファ・カプスという作家志望の青年に「もしもあなたが書くことを止められたら、死ななければならないかどうか、自分自身に告白して下さい」と問い、「深い答えを求めて自己の内へ内へと掘り下げてごらんなさい」とアドバイスする。「およそ芸術家であることは、計量したり数えたりしないということです」と、どこまでもリルケの説く芸術論は崇高だ。だけれど、実生活と芸術活動は相容れないもので、リルケのアドバイスを得たカプスの後年が後書きに出ていたのだが、それはフィッツジェラルドが生活のため、お金のために執筆をしたせいで才能を枯渇させてしまった例と似ている。それを知ったのが哀しかった。
 芸術家に必要なのは「孤独、偉大な内面的孤独」で、「不可解なものを拒まない者だけが、他の人間に対する関係を生き生きとしたものとして生きることができ、自らも独自の存在を残りなく汲み味わうことができるでしょう」。ふと、登山家を思い浮かべてしまった。エベレストなど世界の最高峰を目指す者は多くてもそこに辿り着けるのはほんの一握りで、その陰に何と多くの辿り着けなかった者たちがいることか。