今回も当ブログをご覧になっていただきありがとうございます。
今回ご紹介するのは、キャノンのLマウントレンズの100mm F3.5 II型です。このレンズは、60年前の1958年に発売された、当時レンジファインダーのキャノンVI(6)型用に販売されました。60年前の工業製品と思えない仕上げの良さです。金属ローレットのメッキの良さ、黒ペイント部分も素晴らしく、造りの良さを感じます。
イメージ 1
当時の発売価格は22000円、当時は大卒初任給が1.66万円、今は32.6万円と考えると、今の価格でこのレンズの価格を換算すると43万円!今の最先端高性能レンズ以上の「憧れ」だったんだろうと思います。こんなレンズが360円/ドル(今の1/3!)で換算され輸出されたら、海外でコスパが高くて人気が出たんだろうな、と容易に想像できます。
イメージ 2
後から見ると、レンズの連動機能が全くないレンジファインダーカメラ用のレンズだけに、距離計以外の連動接点などなく、非常にシンプルです。マイナスネジが使ってあるところが、時代を感じます。このレンズは、所有することになったCanon 7/7Sに合うレンズをオークションで物色していただところ、やたらにお値打ちにレンズを落札してしまったものです。外見はご覧のとおりきれいですが、レンズ内部はさすがに経年でクモリが少々出ていました。絞りリングは、レンズの先端についていますが、クリックが付けられていないので、無段階で絞りを設定できます。手探りで開閉できないので、ちょっと不便な感じもします。
イメージ 3
Canon 7Sに装着するとこんな感じで、大柄なCanon 7Sのボディーと、レンズの小ささが非常に際立ちます。このレンズは、フィルター径34mm、長さ69.5mm、重さ184gと、おもちゃのようなコンパクトさです。Canon 7Sでは、ファインダーのブライトフレームが100mmレンズに対応する枠に切り替え可能ですが、このレンズには外付けビューファインダーがついていました。ビューファインダーはマニュアルでパララックスが補正できるようになっており、凝った本革ケースに入っています。また、専用フードも立派な本革ケースに入って付属していました。とにかく手抜き感一切ないところが、たまらなく素晴らしいです。
発売後還暦となるアンティークレンズですが、Ricoh GXR M12マウントと組み合わせて、デジタルで撮影してみました。上段がf3.5、中段:f5.6、下段f8です。(共通:Ricoh GXR A12、ISO200、上段:1/250、中段:125、下段:1/60)
イメージ 4
イメージ 5
イメージ 6
第一印象は、びっくり!還暦レンズでもかなりよく写ると思います。f3.5では、さすがにコントラストはかなり低く、線は太く柔らかい絵になります。周辺光量も若干落ちることを感じますが、色調は偏っていません。f5.6ではまだ若干コントラストが低く、柔らかい感じが残りますが、f8まで絞ってかなりコントラストは改善されます。f8まで色調の変化は少なく素晴らしいと思います。
次に近くを撮りました。上段からf3.5、f5.6、f8です。(共通:Ricoh GXR A12、ISO200、上段:1/100、中段:1/50、下段:1/25)
イメージ 7
イメージ 8
イメージ 9
f3.5では、かなり柔らかい描写になるのは、遠景と同様ですが、このように中央に被写体があるときには、周辺光量の低下は感じられません。ピントあっているところがピシッとした感じに今一つ欠けている感じがありますが、背景のボケが自然で大きく、浮き立つような画面の効果はあります。f8まで絞るとしっかりした感じが出てきます。色調はやはり一貫して自然な感じです。還暦レンズですが、しっかりとした造り、描写にびっくりでした。こんなレンズを使って写真を撮っていると珍しがられるかもしれませんが、使い方によっては十分使い物になりそうです。