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道中読書日記 ~in the train~

気まぐれで始めてみようと思った読書ブログ
いつまで続くか分からないけれど、本は読み続けているのだろうな……

気まぐれで始めてしまったので、いきなり途中からです。途中といってももはや終盤。物語でいうとクライマックス。


作品概要は、ショートショートの第一人者である星新一の父親である、星一の伝奇小説です。星一は製薬会社を設立し、当時の経営者としては異質な才能を遺憾なく発揮して大会社にまで成長させたほどの人物です。そのためにライバル会社や政党からの数々の妨害を受け、ついには倒産に至ります。
そんな波乱に満ちた人生を見事に描いているのがこの本です。


実は、高校時代に一度読んだことがあり、6、7年経った今、読み返している状態です。というのも、同じく星一について書かれている伝記物があって、幼少時代からアメリカ留学時代までを描いた『明治・父・アメリカ』、星一とゆかりのあった人物を伝記にした『明治の人物史』を読んで、当時にはなかった知識のある状態で読んでみようと思ったからです。


とまあ、作品紹介はこのくらいにして今どのあたりを読んでいるかというと、冷凍工業事業のための準備で多忙を極めている星一に対して、台北の検事局へ出頭せよという命令が幾度となく通達される場面。
読んでいない人には分からないというのが心苦しいですが、気にしない方向で。気になる人はぜひ一読をおススメします


読み始めたころから思うのは、星一という人のエネルギッシュさ。当時としても異質ながら、現代であっても異質だろうと思わざるを得ない……。
たとえるなら、明石屋さんまのしゃべりをそのまま仕事に置き換えた感じ。さんまさんがしゃべる勢いのまま仕事に打ち込む、それもただ運営するだけじゃなく、社員や子会社に対して仕事に関わる講義や演説旅行まで実施するほど。
そこに妨害工作の対応もしなければならないのだから、その気力は想像するにも恐ろしい……。
おまけに、中盤では地元の選挙で対抗馬として出馬するということもやっている。それも前代未聞のやり方で。


そして一番驚くべきことは、これらの所業を不正なく行っているということ。だからこそ、読み進めるたびにやるせなさと憤りで一杯になる。
とくに、簡潔でクリアな文章で綴られている分、そういった感慨が直接に伝わってくるのかもしれない。


読むのは二回目といえども、予備知識と人物の関係が明るくなったことで、より深くそういった感情になっている。
もし気になって読もうと思った人は、ぼくと同じ順序で読んでみるのがいいかもしれないです。



という感じで今回はここまでにしたいと思います。
では次回まで、良い旅を。