Boyish「Sketch for 8000Days of Moratorium」 | Rotten Apple

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[Japan,Indie/DreamPop]

01.ライラック
02.秘密の岬よ永遠に
03.窓際の少女
04.ハートウォームギター
05.スケッチブック
06.降り止まない夕立
07.青い風船
08.8000日のモラトリアム
09.陽気な女の子の歌
10.1990


Dead Funny Recordsのインディー/ドリームポップBoyishの2ndアルバムが素晴らしいです。トリプルギターにシンセを加えた編成となった彼らですが、アルバムを通してギターとシンセが鳴り響く所謂ウォールオブサウンドが展開されます。また「8000日の心象風景」をテーマに作られているので、聞き進める内に幼少期から大人になるまでの姿を観ているような感覚になる非常に完成されたアルバムです。

先行公開されていた「スケッチブック」の耳に流れ込む洪水ギターや、甘酸っぱさを詰め込んだラブソング「窓際の少女」はアルバム内でも特に素晴らしい曲。しかしこのアルバムは歌詞の世界観にこそ着目すべきかと思います。
例えば「ハートウォームギター」の "ティーンで死ぬ 君はそう言うけど ライ麦畑できっと捕まえる"、「8000日のモラトリアム」の "変わってく日々をゆっくり確かめ 終わりがいつまでかわからなくなるよ" といった青年期の心境が描写された歌詞。まるでアメリカの田舎を思わせる物語が日本語で音に乗っていく。それによって海外のモラトリアム映画を観ているかのようなサウンドスケープを浮かばせます。
ラストの「1990」では再び序盤の「秘密の岬よ永遠に」とリンクしたりと本当に映画のようなアルバムです。

インディーポップというジャンルはモラトリアム真っ只中の若者のためのジャンルのように感じています。シーンを追いかける上で、これは自分達のシーンだと思えないことは結構大きい問題で。しかし大人になってモラトリアム映画を観ても楽しめないかと言われればそうではないし、昔の自分と重ねてその間は当時に戻って浸ることが出来ます。そういう風に感じれば自分達のシーンだと思えるなと。このアルバムはそんな体験をさせてくれました。今年のベストを書き始める前にぜひ。