01.ハジマリ。~WORLD WIDE DEMPA~
02.でんぱれーどJAPAN
03.Future Diver
04.VANDALISM
05.Sabotage
06.W.W.D
07.ナゾカラ
08.イツカ、ハルカカナタ
09.キラキラチューン
10.冬へと走りだすお!
11.なんてったってシャングリラ
12.W.W.D Ⅱ
13.ORANGE RIUM
14.強い気持ち・強い愛
15.でんでんぱっしょん
アイドル戦国時代と呼ばれている空前のアイドルブームはもう終わりに近づいている。多様化が進み非正統派が支持されいかにインパクトを残すかというところに重きが置かれもはや飽和状態。そんな状態になるまでこのシーンのおもしろさに気づけなかった自分のアンテナの低さに辟易するが、しかしその飽和状態でも名前を耳にするということは確かな実力を兼ね備えているということに他ならない。いくつか具体的に名前を挙げよう。
まずはヒップホップアイドルlyrical school(ex.tengal6)。tofubeats,イルリメ,Fragment,Okadadaなどの豪華製作陣によって作られたクオリティの高い曲が音楽好き層にも受け入れられている。
同じくヒップホップアイドルでECDのマス対コアをカバーしたまず太鼓という曲が話題を呼んだライムベリー。SUPERMCZTOKYOはオールドスクールな雰囲気を出している良曲。
フューチャーファンク要素の強い曲を多数発表しているEspecia。EspeciaはSoundCloud等で公開されてるリミックスが他のアイドルに比べ非常に多いことからネット音楽クリエイターに支持されているのだろう。その流れで話すならMALTINE RECORDSとのコラボも発表された東京女子流。これはリリースが本当に楽しみ。
そして最近増えてきたラウド系アイドルFRUITPOCHETTE。作曲は愛媛のWhen My Life is OverがしていたりバックバンドはAGGRESSIVE DOGSがやってたりと実際のラウドシーンに近い音作りをしている。
アフィリア・サーガはみんなかわいい。
ここに書くべきか悩んだけれどAKB48も恋するフォーチュンクッキーという2013年のアンセムを作り出し、中年層からは懐かしの80年代ディスコとして若年層からは忘年会の余興曲として音楽好きからはフューチャーファンクのJPop的アプローチとして支持されている。
アイドルに関しては情報に疎いため他にもまだまだいると思われるが、音楽的な目線から見ても様々なジャンルが入り乱れて多様化が進んでいる状況。
すでに長い。
上で様々なジャンルを挙げたけれど本題のでんぱ組は電波ソングと呼ばれている。詳細な説明はWikipedia先生にお任せするとして個人的に聞いた印象では、様々なジャンルをクロスオーバーさせたBPM速めのプログレという感じではないかと思う。
アイドルソングやエレクトロ、メタルや渋谷系など様々なジャンルを割らずにそのまま無理矢理詰め込んだような、歌唱的にもJPop的なメロにラップやスポークンワードが入っていたりと幅広い。
クレジットを見るだけでもそれは明白でBEASTIE BOYSと小沢健二のカバー、参加陣はヒャダインにWinnersの玉屋2060%、かせきさいだぁにPandaBoYなんて名前も。
曲作りの手法的にはサンプリングとクロスオーバー。実にヒップホップ的である。
わかりやすい例を挙げるならでんでんぱっしょんではシンセを全面に出しつつラップを入れそのパートではカノンをサンプリング。玉屋2060%はでんぱれーどJAPANも手掛けているところからでんぱ組との相性の良さを感じる。
冬へと走り出すおでは渋谷系、VANDALISMではヒップホップとメタル的な展開に演歌パートなんてものまで入れてくる。そもそも電波ソングというものでんぱ組という存在自体がVANDALISMなのだろう。そしてうるさい外野への怒りを曲で表現するところがまさにヒップホップ的ではないかと思う。
そして極めつけがストーリーテリングを使ったW.W.DとW.W.D Ⅱ。それぞれの実話を元にしたメッセージソング。この2曲はネガティブなドキュメンタリーがエンターテイメントになりうるかという実験的な曲のように思える。結果としてそれは成功した。昨今のアイドルでは必要不可欠とも言えるストーリー性を曲中で全て表現し、Everything's Gonna Be Alrightではなく生きる場所なんてどこにもなかったマイノリティがそこから夢を目指すという実話を元にしたメッセージソング。既に多くの人がこの曲について語っているので割愛するが実にアイドル的ではない曲。6人の名前を曲中に出すことで容易な卒業や加入を不可としこの6人で続けていくんだという自分達への戒めのような曲。この曲が好きだと言っている人はそんなに見かけないが今のでんぱ組には間違いなく必要だったということを否定する人は少ないだろう。
しかし身を削りライブでは泣きながら歌われるW.W.Dよりもあれだけテンションの高いFuture Diverが涙腺を刺激するのは何故なのだろう。色々な背景を知った上で聞くハイテンションな電波ソングはそれまでとは少し違って聞こえてくる。
Future Diverは前作からの再録。2年前まだ5人編成で決意表明のように歌う"夢で終わらんよ"と、W.W.Dに出てくる国へ本当に行けるようになって"萌えキュンソングを世界にお届け"がただのキャッチフレーズではなくなってきている今の状況で歌う"夢で終わらんよ"。自分達が書いた詩ではないもののその言葉にずっしりとした重みが出てきている。
これは生きる場所なんてどこにもなかったマイノリティが認められていく過程、現在進行形の参加型サクセスストーリーなのだろう。だとするなら今聞かないでどうする。
個人的におもしろいと思ったアイドルの特異な部分は、歌、ダンス、ビジュアル、人間性、握手会での対応を全て含めて評価していいし批判していいということ。逆に音楽的要素だけでは図れないものが多い。彼女達はアイドルとしてだけではなくモデルグラビアDJオーガナイザー声優と様々なかたちでメディアに露出している。きっかけはなんでも良い、誰も責めない。
そんな風にきっかけをたくさん振り撒きながらおいでおいでと手招きしている。下手な先入観は捨てて飛び込んでみてはどうだろう。未知なる新たな世界が見つかるかもしれない。電波ソングがJPopのスタンダードへと変わっていく過程を、夢が夢で終わるのかそれとも夢で終わらないのかを見届けようと思う。