窪美澄「ふがいない僕は空を見た」 | Rotten Apple

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ふがいない僕は空を見た (新潮文庫)/新潮社


-あらすじ-
高校一年の斉藤くんは、年上の主婦と週に何度かセックスしている。
やがて、彼女への気持ちが性欲だけではなくなってきたことに気づくのだが――。

姑に不妊治療をせまられる女性。
ぼけた祖母と二人で暮らす高校生。
助産院を営みながら、女手一つで息子を育てる母親。

それぞれが抱える生きることの痛みと喜びを鮮やかに写し取った連作短編集。



また良い小説に出会いました

心温まる話でもスカッとするエンターテイメントな話でもないけれど
感情が揺さぶられてちょこっと心に何かを残すような話


冒頭から高校生と人妻のアニメコスプレシチュエーションセックスっていう場面から始まるので
奥田英朗のようなブラックユーモアな感じで進むのかなと思いきや

姑が不妊治療を無理強いする話や
家族が宗教に騙される話など進むごとに黒さが増していき

セイタカの章は泣きたくても笑うしかないようなやるせない話が展開され
この話は別にブラックな訳じゃなくてどこにでもある日常の話なんだと気づく

世界は美しくなんかないってことを認めた上でそれでもなんとか生きていかなきゃいけない


そして最後にはタイトルに戻るのかな

自分の無力さを感じ天を仰いでるとしてもまだ下は向かずに上を向いてる

どこかに隠れてる小さな希望を頼りにまた歩き出すんだろうね



窪美澄っていう人の小説を初めて読んだんですけど
文体とか言葉選びが好きでした

重松清の人間くささと奥田英朗のブラックさを足したような感じかなって思いました


文庫版には巻末に重松清の解説が載っていておもしろいのでぜひそちらも