何度か書いたと思うがまた書く
幼稚園に通っていた頃の話

夏…いや少なくとも半袖の季節
私は淡い紫のストライプの丸衿で前ボタン開きワンピースを着ていた
弟と遊んでいた

制服の二人連れ
一人は自転車を押してた

どちらかが私に声をかけた
『〇海神社の行き方知ってる?』確かそう道を聞かれた

知らない人についていってはいけない
それは知ってたしわかってたつもり
でも人に聞かれたら教えてあげなきゃと思った

『知ってる』
『じゃ連れてって』
そんなやり取り

そして一人に道を教えるんだと意気込んでたと思う
だって私はお姉さんだもんって

浅はか世間知らず子供

近所の神社だ
自信は有った

しかし
男は全く違う道に進む
私は袖を引っ張り何度も
『そっちじゃないよ』と言う
男は『こっちのはず』と進む

私は悪を知らなかった
間違いを正す、教えなきゃとムキになってたと思う
繰り返し道はあっちだと言ってた記憶

気がつくと駐車場から田畑の畦道
何故そこに辿り着いたか覚えてはいない
在る意味一目に付かないが野良仕事してる人には目に止まらないはずは無い
幼稚園児と高校生

男に言われるがまま
ワンピースを脱いだ
疑問は口にしたと思うが…

私は畦道に横たわり
男がのしかかっていた
記憶では『重いよ』『痛いよ』と繰り返し繰り返し言ったと思う

何をされたか
幼稚園児にはわかるはずもない
とにかく嫌な気分だった

記憶が抜けているが
帰宅したら近所のおばさん連中とお巡りさんが来ていた
婦警さんも居た
『何をされたの?』みたいな質問をされたが
私には警察が私を捕まえにきたと悪い事をしたと思い
『何もしてない』と確か繰り返し答えた
道を教えたとか話した
それは本当だったから

誰も私の言葉を信じて無かったんだろう
知ってたと思う
しばらくやたらお巡りさんが家に来てた
私はその頃下着を血で汚していた記憶が有る

あれから私は嘘を覚えた
上手く相手の望む嘘を付けるようになるまでそう時間はかからなかった
小学生低学年で担任が親に『娘さんは日記に嘘を書いている』と告げたから
楽しくなくても楽しかったと優等生な日記を

未だに通報したおばさんは確定出来てないが
弟が騒ぎおばさんが私と男を見たに違いない
婦警さんが居たから

私は小学三年の時
親の本棚から答を見つけた
小学生になった頃から親の目を盗み海外ミステリーに松本清張やら読んでたから
男と女については簡単に知識としてインプットされた
現実感は無かった
快楽等想像出来ない子供だったから

犯人には一時期感謝してさえいたように思う
大人に早くなりたかったから
周りの子供の知らない知識を早く得て見下してた
男に対して早々に諦め幻滅を覚え
お陰で子供らしくなんて早々卒業した気分だったから

あれから学校で優等生振り
騙された教師にはえこ贔屓に近く可愛がられ
本性を見抜いた教師にはそれを告げられた『本心とは違うだろ』と
友人達のクラス好きな男子ランキングとか馬鹿らしいと思っていた
男の上に立ち仕事をしたいと言って憚らなかった

しかし私は高校1年で恋をした
声に一目惚れ
先輩でよく見ると色白で細くて綺麗な長い指

因みに私はそれまで酷いファザコンだった
何時も父の帰宅を待ち
父の食事の脇に居て
父の愚痴を聞き一緒にニュースを見ていた
休みは父が行く職場にも旅にも釣りにもついて行った

父は色白で風呂上がりもパジャマで男臭く無かったからか

大学時代
私の周りの男友達は皆男臭さより中性的な人が多く
仲良く過ごした

恋愛は確信犯的に
本気で恋をした
かつ体を許す事に抵抗は無かった
私には意味が無い行為であり
強いて言えば
片思いから脱する手段になっていた感は否めない
後悔しているが反省は微妙だ

いろんな男に恋し付き合い
在る時気がついた

ガタイの良い男はいいなと思っても本気で惚れない事に
恐怖がそこに有る事に
常に恋愛は肉体より精神的繋がりと願っている事に
肉体的快楽を嫌悪している事に

それは今でも変わらない

全てはあの幼児期の体験から始まったと言って過言でないと思う

そして私は十数年して犯人を嫌悪した
犯人を怨んだ
子供らしさを奪った奴を
私をイビツに歪めるきっかけを巻いた奴を
私を汚した奴を
男達の性的一面を気付かずに生きて来れたかもしれない可能性を潰した奴を

父に犯人について尋ねたのはつい数年前だ
当時高校生だった男は近所で結婚し暮らして居ると知った
知っている父にも驚いたが
普通に暮らしている犯人はふざけていると思った

この話は後にも先にも
親に問い掛けたのはこれっきり
私は犯人が裁かれ無かったと容易にわかるが
犯人詳細を知らない
知れば行動を起こす
少なくとも家庭を壊す位するだろう
だからまだ詳細を知ろうとしない
父に聞けば教えてくれるかもしれないが
知ったら何をするかわからないから

私は結果
こうして大人になり
子供に戻っている
いや
そもそも大人にはなれなかった
子供のまま歳だけ重ねた
余計な知識経験ばかりの頭でっかちのガキのまま
大人になったつもりの子供のままだ

松本侑子 著 『植物性恋愛論』は私に響き
長野まゆみの作品に登場する少年達が心地良いのも
少年達の純粋さ子供らしさが私の理想の男性像なのだろう

私は今までやり直したい事は多く有るが
事件前に戻って
事件に合わない人生はどうだったかと思いを馳せる

残念ながら想像力豊かな私にその人生は想像出来ないのだ
どう考えても想像出来ない
この想像力豊かと自負する私が想像出来ない人生

何故犯人は幼児に、いや、私に性的暴行を試みたのか聞いてみたい
私は未だ不信者変質者痴漢遭遇率は高い
幼児期から何か隙が有ったのかと

歳を重ねるごとにレイプシーン等テレビ映画DVD等みると
過剰に反応するようになった
恐怖と怒りが納まらず
最後には自己嫌悪である

私の人生というキャンバスは
隙間無く汚れ光も通さぬ闇だ
白い地は無い
無くしてしまった
綺麗にしたくて
塗れば塗る程
責任は私自身だ
自業自得である

何処かで犯人だけでなく男達に復讐したいと言う気持ちが有る
男を信用したくとも裏切られる事も多かった
騙されてもわかっていても信じて傷つく
人は皆良い人で有ると縋るような性善説を手放せない
他人は自分の鏡で他人に傷つけられたら自分もその人を傷つけてたと思う
それが私の思考

大人には死んでもなれそうもない
小学生の頃よく友達に言っていた
『40迄に死ぬ予定』と
不思議だが
預言めいている

大人にはなりたくないのだ
傷つくのにはいつまで慣れない
周りから孤独にされるのは堪えられないが
自ら選ぶ孤独は好きだ
男は馬鹿だと思いつつ恋をする

大人にならない私
子供だから生き方考え方は変えられない

ロリィタ服を愛するのも
大人になりたくない気持ちのあらわれかもしれない

あの犯人と出会わなければ
私はどんな人間になっただろう
大人になれたのだろうか
闇など愛する事は無かっただろうか

私は自分を犯人以上に憎み嫌っているように思う
なのに自分が好きだ
私が全て悪いのだから
だから自分を壊したくなるのだ
好きだから許せない自分が居る

リセット出来ない人生
うんざりだ
無垢だった私は数年しか生きていない
そんな人生

他人を殺められない私に
残された道は一つ
いや二つか

女の子とその親達に言いたい
気をつけてと