病院の治療方針に納得がいかない。
理解はできても受け入れられない。

その時、どんな選択肢があるだろうか?

医者の言うことだから、と従う?
セカンド・オピニオンを受ける ?
ネットで調べる?

ここに日本の医療の問題がある。

日本の医学は、権威主義からデータ主義に変わったが、現場では医師の治療方針の押し付け(パターナリズム)が今だに続いている。

科学において、データ主義がなりたつのは対等な議論があるからだ。
新しいデータが出る度に、先行研究と比較してその妥当性を検討し 、評価する。
ここでは若手が第一人者を越えることもあるし、異分野の研究者が思わぬ観点で問題を解決することもある。
例えば、DNAの二重らせんを解明したクリックは物理学者だった。
科学者は、データに対して対等な議論を積むことでより正しい結論を目指してきた。

医学でも欧米では、PubMedから論文を調べて患者と医療チームが対等に議論できる土壌が出来上がっている。
PubMedとは、医学や生物学の世界中の文献が検索できるエンジンである。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/
このPubMedはアメリカ政府が公開していて、世界中どこでも誰でも無料で検索できる。
論文の概要は大卒レベルで読めるようにしてある(#1)はずなので、自分や親しい人が病気になったらPubMedで調べてみるといい。
特に地方の病院では英論文を読んで情報共有する習慣がないのか、十年以上前の治療法をそのまま使っているという話をちらほら聞く。

PubMedではなくGoogleで検索するのはどうなのか?

Google検索で引っかかるHPは、論文と違って査読(#2)がつかないため、信頼性が担保されない。この場合、自力で参考文献をチェックし、研究手法や統計解析の評価をしなければならないので、なかなかハードになる。
厚労省は信頼していいと思うが、製薬会社は自社の製品を売るために書いているので、都合の悪い情報に言及していないことがある。食品会社や健康関連企業については、バイアス(#3)を排除できず、まともな医学研究になってない場合が多々ある。
また、Googleの検索順位は非公開で、研究の妥当性を測る指標にはならない。

確かな情報を得るには、PubMedで論文検索することを勧める。

医師の言いなりではなく、根拠のない代替医療(#4)に依存するのでもなく。
患者と医療チームが対等に話し合って最もよい意思決定ができるように、確かな情報を集めてほしい。

もっと違う治療法を試したいときの参考になれば幸いである。

以上、アカデミアの片隅より。



#1 日本の論文は専門家に向けて書かれる傾向にあるが、欧米の論文は専門用語に頼らず広く読めるように書かれている。色々な分野にアプローチし、政治家や投資家を動かせれば、研究費とポストが手に入るからだ。背景として、日本の研究者はお抱え職人でよいが、欧米の研究者はリーダーであることを求められる。博士号持ちの起業家も多い。

#2 査読は専門分野の研究者によるチェックのこと。最近、ハゲタカジャーナルによる査読不正が発生し、大問題になりつつある。査読がなければ、HP上で自説を発表するのと何も変わらない。PubMedで検索する分には、ハゲタカジャーナルは大体落とされているし、書評や引用回数から判断がつく。

#3 バイアスは誤差のこと。医学においては選択・交絡・情報の三種に分けられる。
↓のサイトが一般人向けでわかりやすい。
健康を決める力:【資料編】エビデンスの見方
http://www.healthliteracy.jp/shinrai/post_3.html

#4 代替医療は、(西洋)医学的妥当性が確かめられていない医療のこと。漢方医学、ハーブ、サプリ、食事療法、ヨガ、マッサージなど。ホメオパシーはプラセボ以上の治療効果がないとされる一方、漢方薬については医学的研究が進んで認められつつある。サプリに関しては飲みすぎ、飲み合わせで健康被害が出るケースが報告されている。

※ブログなので参考文献は省略。