7月下旬。身体に変化が起きた。
なにも食べられない、食べたくない。
食べ物を前にすると気持ち悪い。
頑張って食べても吐く。
これが2週間ほど続いた。
入社前46kgあった体重が、41kgまで落ちた。
頬がこけて、腕が細くなった。手首が折れそう。
自分で自分が気持ち悪かった。
頭痛も酷くて、毎日会社に行けていたのが不思議なくらい。
立ちくらみ、幻聴、肩こり。体中がおかしい。

最初に私の異変に気づいてくれたのは、信頼していた上司だった。
実は密かに憧れを抱いていた人でもある。
真っ先に気付いて、何かありそうだから話を聞きたい、一緒に出掛けよう、と言ってくれた。
けど、自分のことを話すのが苦手な私は、緊張してしかたなかった。
でも、すごく心配してくれてるし、頼りたい。助けて欲しい。そう思って、思いの丈を吐き出してみた。
話してるうちに、私は指導員の先輩が苦手だということに気付いた。
もともと男性が苦手だったこともあるけど、その人の発言や行動が、セクハラじみていたことも堪えていた。
このままずっとこんなんじゃ、そのうち餓死するんじゃないかと思った。
食べられないのは、本当辛かった。
そのあと、指導員を変えてもらった。
上司や同期、同期の指導員の先輩はとても心配してくれて、涙が出た。
気分転換に買い物したり、飲みに行ったり。
本当にいい人達だった。
束の間だったけど、楽しかった。
辛い思いしたけど、上司に救って貰えて、少しずつだけど、食事ができる様になった。
食べやすい様なアイスとか飲み物とか買ってくれて、ちょっとずつ、拒食症が治っていった。
本当に、いい人たちばかりだった。


だからこそ、期待に答えられない自分が本当情けなくて、今でもあの頃を思い出すと涙が出る。
行った場所、食べたもの、楽しかった会話。
ふとした瞬間思い出して、涙が出る。悲しい。寂しい。

でも、あの楽しかった時間を壊したのは、紛れもなく私。
私のあだ名はねえさんでした。
なぜか、研修の頃からずっとねえさん。
同期がそう呼ぶの。
しっかりしてる、なんでも知ってる、頼れる、って思われてたみたい。
そんなの、仮面だよ。
本当は全然しっかりなんかしてない。


人に頼られるのは嫌いじゃなかった。
必要とされてる気がして。
私は、昔から必要とされたがってた。異常なまでに。
孤独が嫌だった。
小学校、中学校の頃のいじめが原因だったのかもしれない。
ひとりが嫌。
誰かに必要とされたい。
誰か隣にいてよ。
ひとりにしないで。

その為に、だんだん完璧な自分を演出するようになってた。
勉強が出来て、明るくて、誰とでも仲良くなれる。
おしゃれで、気配り上手で、いつもニコニコしてる。
そんな愛されるような女の子になりたくて、必死だった。


結局、私は嘘ばっかりの人間。
でも、そんな嘘でまみれた私を、みんなは好いてくれてた。
頼りにされてる、必要とされてる。
もっと頑張らなきゃ。もっともっと、みんなが求める自分にしなきゃ。
毎日必死だった。

私がいた部門は、新人の私にもどんどん仕事を任せてくれる部署だった。
後からただめんどくさい仕事を押し付けられてただけど知るも、当時はそんなけと思いもせず。
7月半ばには、初めての出張も経験した。泊まりがけでの展示会。
商品を触ったり並べたりはすごく楽しくて、初めての自分の作品(自社ブースのプロデュースをした)は評判も良くて、嬉しくて何枚も写真を撮った。
ただ、おじさん達との長時間移動や、泊まるのもお酒を飲むのも、今思えば辛かったなあ。
車酔いもしたし、食が細いから一緒にお昼を食べるのも苦痛で、車内での会話も困ったな。
プレッシャーみたいのも感じてたかも。
英語の試験成績が一番だって、どこからか聞いたみたいで。
たまたまなのにね。
別になんてことない、派手な子ばっかりの女子大卒なのになあ。

そういう小さな小さないろいろなことが積み重なって、大きな塊になってた。心が重かった。