努力を見事に花開かせたヒト~『ルーシー・リー展』 | あしたまにゃーな

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なんだかてんやわんやな日記です☆

行こうと思ってチケットを買っておいたのに、

なぜか足を運んでいなかった『ルーシー・リー展』を観に、

国立新美術館に足を運びました。


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ルーシー・リーというと、

私は美しい色合いの陶器を思い浮かべますが、

こんなにたくさんの彼女の作品を観るのは初めて。


この日も荷物を預け、

メモ帳を片手にじっくりと時間をかけて回りました。


ウィーン生まれのユダヤ人・ルーシー・リーは、

亡命を余儀なくされロンドンに渡ることに。

ヨーロッパとは異なる陶芸環境に戸惑いながらも、

93歳で亡くなるまで、生涯、作品を造り続けたそうな。


展覧会は、そのウィーン時代からの彼女の創作の軌跡を

250点もの作品と共に紹介する構成。


ウィーン工房時代の華やかな色合いのものや、

バウハウスの影響を受けた作品など、

後年の彼女の作風からはちょっと意外な作品も。


ロンドンに移ってからは、

東洋陶磁に範を置いていたバーナード・リーチから

なかなか認められず、思い悩んでいた彼女。


ボタン製作の手伝いに来て知り合った

ハンス・コパーに励まされ、懸命に作品造りに取り組みます。


青銅器時代の土器から着想した

フリーハンドの掻き落としで、素朴で味わい深い作品を造ってみたり、

器の各パーツを個別に成形して組み合わせ、

より大型の花器に挑んでみたり。


全体に厚く釉薬をかける技法は、

溶岩に例えられ、リー独自の釉薬として確立されていきます。


会場の随所に彼女の創作ノートや手紙が展示されていましたが、

まるで化学の実験かと思うほど、

釉薬の配合を少しずつ変えては、研究を繰り返していたんですね。


そんな努力が次第に実を結んだのでしょう。

造形もさることながら、さまざまな釉薬や装飾技法を自在に操り、

晩年に至るにつれ、のびのびとした作品が生み出されていきます。


私は、ブツブツとした溶岩釉や、

どこかプリミティブな掻き落としはあまり好きではないのですが、

リーの生み出す色と形には、目を奪われっぱなし。

気に入った作品を簡単にスケッチしていくと、

あっという間にメモ帳が埋まっていきます。


どこか不安定で、脆さを感じるのに、

決していびつではなく、破綻しない絶妙なバランスの造形と、

色遣いの巧みさときたら!


素敵だと思った色の組合せをメモしたのですが、

こんなにありました↓


テラコッタのような色×濁りのない黄、

淡いピンク×濃い茶の下地、

たまご色×濃い茶、

赤茶色×濃い茶、

黒と朱、

茶×ラブリーなピンク×濃い茶×淡いグリーン×ゴールド、

ゴールド×黒×濃い茶×白、

ピーコックグリーン×黒×ゴールド、

くすんだ茶×ピンク×赤×白×ゴールド、

ターコイズ×黒×赤茶×ゴールド、

黒×ゴールド×ブルー、

鶯色×黄×黒×ゴールド・・・


濃い茶や黒、ゴールドといったモダンな色に、

濁りのない明るい色や、淡い色を合わせたりというセンスの良さは、

当時の陶芸の世界では、

かなり注目を集めたのではないでしょうか。


そんな作品を生み出したルーシー・リー本人ですが、

これが実に可愛らしいヒトでして。

デヴィッド・アッテンボローがインタビューした映像が上映されていましたが、

なんていうか、芸術家というよりは、

にこやかで上品な理想のおばあちゃん、というカンジ。


この可愛らしいヒトが、

ひたすらにろくろを回し続け、

芸術の道を究めてきたのかと思うと、

なんだか不思議な感じがするくらい。


たっぷり2時間近く、大いに楽しめた展覧会でした。

6/21(月)までなので、未見の方は週末にでもぜひ!