Oさんと再び会う日がやってきた。
顔を見た瞬間、Oさんがいつになく
緊張しているのがわかった。
それに釣られて、私の心も一気に波立つ。
何を言ってるのか、自分でもわからなくなるくらいだった。
ぎこちなく始まった会話。
お互い、無理に何かを話そうとしているのが分かる。
Oさんも私も、どちらかと言えば
おしゃべりは得意じゃない。
沈黙が訪れては、なんとか言葉を探して
また話し始める。その繰り返し。
でも不思議と苦しくはなかった。
無理に話さなくても、そこにOさんがいてくれる。
それだけで、胸が少し温かくなった。
──でも、頭の片隅にはずっと
「聞かなきゃ」という想いがあった。
友人たちの「ゆーちゃんが聞かなきゃ、
はじまらないよ」
その言葉が、ぐるぐると頭の中を巡る。
でも…
聞いていいのかな?
はじめちゃだめだよね?
断られたらどうしよう…
迷いと緊張で、私の中の時間が止まっていく。
Oさんのスマホが何度か鳴る。
チラッと見ながらも、出ようとはしない。
その姿が、なんだか前にも見たような気がして、
「この時間をちゃんと大切に思ってくれてるのかな」
なんて、勝手に嬉しくなった。
気づけば、もう1時間以上が経っていた。
でも──
このままでは、今日が最後になってしまうかもしれない。
私の中に、焦りが込み上げてくる。
そして気づけば、口が勝手に動いていた。
「電話、大丈夫ですか…?」
言っちゃった。
心臓がドクンと跳ねる。
Oさんは、少し驚いた顔をして、
「すみません。そうですね。
そろそろ行かないとですね。あっという間でしたね」
そう言いながら、渡す予定だったものを
私に手渡してきた。
私も、Oさんに渡したいと思っていたものを、
そっと差し出した。
──ああ、やっぱり、これで終わりなんだ。
そう思って、Oさんが立ち上がったその瞬間だった。
「あ、あの……ラ、LINE教えてください」
震えるような声だったと思う。
心臓の音しか聞こえなかった。
Oさんは一瞬、固まっていた。
以前、冗談混じりに「LINE交換はできない」
って言っていたことが頭をよぎる。
もうダメかもしれない。
そう思ったその時には──
私たちは、無言でスマホを近づけていた。
その瞬間のOさんの顔は、
不思議と、私の記憶から
ごっそり抜け落ちてしまっている。
緊張しすぎて、全部が真っ白だった。
でも、あの一言を伝えられてよかった。
別にどうこうしたいってわけじゃなかった。
あの時の気持ちを振り返って、考えても、
とっても不思議な感覚。
──続きは、次回に。