昨日のデートのメインイベントは、  
彼が予約してくれた高級懐石料理のお店だった。




もともと彼は仕事で会食に行くことが多くて、  
「正直、こういうのもう飽き飽きなんだよね」
なんて笑っていた。  
でもある日、会食の写真を見せてくれたとき、  
私が「すごくおいしそう、和食大好き」
「母が生きてたころ一緒に行ったのが最後かも」
なんて何気なくこぼした私の言葉を、
彼はちゃんと覚えていてくれた。




「じゃあ、海の日のデートの日に行こう。
予約しておくね。2人だけの会食しよう」って。




そう言ってくれたときの笑顔、今でもはっきり覚えている。




夜景のきれいな個室。  
向かい合わせに座り、運ばれてくる
一皿一皿に感動した。  
見た目の美しさ、出汁の香り、
口に入れたときの幸福感…。  
私は思わず「おいしい…」と
何度も笑顔になってしまった。




彼はそんな私を見て、穏やかに目を細めながら、  




「今日はとにかくゆー喜ばせたかった。
特別な日にしてあげたかったんだ。」  




と何度も繰り返した。




私が冗談めかして「愛だね」と言ったら、  
彼はすっと真顔になって、  
「そうだよ。愛情がなかったら、
まずこんなとこ予約しないし、来ないよ。」  
そう返してくれた。




胸がきゅっとなった。




お料理は最後のほう、
正直お腹がいっぱいで苦しくなったけれど、  
一生懸命、全部最後まで食べた。  
だって、こんな特別な時間、残したくなかったから。




何度も何度も、心の中で思った。  
「幸せだな」「この人に愛されてるな」って。




──昨日の夜は、本当に特別で、夢のような時間だった。




……そして、その帰り道で、また私たちは愛を確かめ合うことになる。