お食事だけのつもりだった。



「そろそろ帰らなきゃね」  
そう笑った私に、彼は小さく息を呑んで目を伏せ、  
耳元でそっと囁いた。



「……帰したくない。」




気づけば、2人でホテルのフロントを通り抜け、  
エレベーターの中、彼の指が私の手を探し、  
そっと絡めてきた。
 


部屋に入った瞬間、  
バッグを置く間もなく後ろから抱き寄せられ、  
首筋に落ちる熱い吐息に、膝がかすかに震える。



「……さっきから、ずっと抑えてた。」



唇が肩に触れ、  
指先が背中をなぞり落ち、  
腰を抱き寄せられた瞬間、  
体の奥で何かがほどけていった。




ソファに倒れ込むように座らされると、  
ワンピースの裾がするりと捲られ、  
太ももに落ちる彼の髪に、喉が震えた。



「もう、こんなに……。」



言葉にならない息が零れ、  
指先が奥へと忍び込むと、  
先週の記憶がふっと蘇る。



──数日前、あんなに重なったばかりなのに。  
もう、体のすべてが彼を欲しがっている。  
彼に触れられた途端、  
私の中の理性は、すぐに溶け出してしまう。



舌先が敏感な場所をかすめ、  
指が奥深くを探るたび、  
腰が小さく跳ね、喉の奥から声が漏れる。



「……はぁ、や……あっ……」



気づけば彼に抱き上げられ、ベッドに背中が沈む。  
肌が重なり、彼の名前を何度も呼ぶ声が、
耳の奥に響いている。



奥まで満たされていく感覚に、  
ただもう、腕を回して、身を委ねるしかなかった。



どれだけ強く抱きしめられても足りなくて、  
どれだけ名前を囁かれても、  
心の奥が、もっと、もっと、と熱を求めてしまう。



ほんの1時間だけ。  
それでも、体の奥も心も、  
すべて彼に奪われていった。