去年の夏の夜、  

どうしても一緒に浴衣で出かけたくて──  

何週間も前から、私がしつこくお願いして

実現したデートだった。

 



「本当に着てくるの?」  




直前までちょっと疑ってたくせに、  

待ち合わせの場所で私を見つけた瞬間の  

あの照れた顔、今でも忘れられない。




「やば……なんか、ちがう」  


「こんな感じ…なの?」




そんなふうに言いながら、  

彼はしばらく私の目を見れなくて。  

視線が胸元をチラッと泳いだのも、

ちゃんとわかってたよ。




駅までの道を歩いてるとき、  

すれ違う人の視線をちょっと気にしてる彼が  

なんだか誇らしげにも見えて──




ふいに立ち止まって、  

ちゃんと目を見て「綺麗だよ」って言ってくれた。




その一言で、  

何週間も前から準備してた時間が  

一瞬で報われた気がした。




そんな彼が、  

夜になってホテルの部屋でぽつりとこぼした

ひと言。




「……浴衣、やばいわ」




そのあとのことは──  

次の投稿で、続きを。