ふとした瞬間に思う。


私の「頑張り」って、  
誰のために続けてきたんだろう。



母として、妻として、  
家庭を守る役目はちゃんと果たしてきたつもりだった。



でも、  
誰かが私の名前を呼ぶとき、  
「ママ」「お母さん」「奥さん」──  
そこに“私”はいなかった。



彼に会えることが、  
唯一、女として存在できる時間だった。



だけど最近はその時間さえ、  
だんだん遠くなっている気がする。



彼も家族の中の誰かに戻っていって、  
私はまた「誰かのための存在」になっていく。



──それでも、朝は来る。



「もう十分頑張った」なんて、  
誰も言ってくれないから、  
自分でそう思うようにしてる。



今日は少しだけ、  
“自分のために”コーヒーを淹れてみた。



それだけの朝。



でも、それだけで、  
少しだけ私の心は前を向いた。