あれだけ抱きしめられて、  
あれだけ愛されたのに──

 

帰りの電車で、私はずっと窓の外を見ていた。

彼の体温も、  
優しく撫でてくれた指先の感触も、  
まだ身体に残ってる気がするのに、  
もう、二度と会えない人みたいな寂しさがあった。

 

あの日曜日、  
彼に“抱かれた”ことで、確かに私は満たされた。

でも、  
心のどこかが、ずっと「まだ足りない」って言ってる。 

何が欲しいんだろう。  
もっと長く一緒にいたかった?  
もっと言葉が欲しかった?  
……それとも、  
彼の“本音”が欲しかったのかもしれない。

 

「また会おうね」って  
彼は優しく微笑んでくれたけど、  
その言葉の先に、“いつ”があるのかはわからない。


私は今夜も、  
彼の匂いを思い出しながらベッドに入る。


シーツに残ったぬくもりなんてないのに、  
目を閉じると、すぐそばに彼がいるような気がして。

 

──たった数時間。


それだけの時間で、  
私はまた“恋しくなる自分”に戻っていた。


ほんと、どこまで欲張りなんだろう。

 

でも、それでもいい。  
彼が好きだから。  
心が、ちゃんと彼を求めてるから。


また会えたとき、  
「やっぱり、会えてよかった」って思えるように──  
私は、今日の夜を静かに、  
彼への想いで満たして眠ろうと思う。