静まり返った部屋。

遠くで車の音がするくらいで、何も動かない空間の中──

私は、あの人のぬくもりを思い出していた。


 


3週間、会えていない。




彼の体調が思わしくなかったこと、

そして海外出張でバタバタしていたこと。  




全部、分かってるつもりだったけど……

それでも私は、「もうそろそろ会いたいな」って

身体のどこかが、静かに訴えてくるのを無視できなかった。


 


──会いたい、じゃなくて、“足りない”。




彼の声も、肌も、呼吸のリズムさえも。

どれも「欲しい」というより、“戻ってきてほしい”って思う。




これは、ただの恋じゃない。

私の中に、ちゃんと彼が“染み込んでる”証拠だと思った。


 


でもふと、こうも考える。




この関係に“保証”なんてないのに、

私はどうしてこんなに、

信じきってしまってるんだろう──って。


 


彼を疑ってるわけじゃない。

だけど、このままの関係が

何年も、何十年も続くとは限らないことも、

分かってる。




もしも突然終わってしまったら?




もしも、あの人が「家庭を選ぶ」と決めたら?




そんな未来に、私はきっと立ち尽くすだけなんだろう。


 


それでも。




たぶん私は、また同じ恋をする。




彼が与えてくれた安心も、熱も、

「私でいていい」と思わせてくれた時間も──

全部、間違いじゃなかったと思えるから。


 


不安定で、形のない関係でも、

あの人と過ごした日々が、私を確かに変えてくれた。


 


そう思ったら少しだけ、あたたかくなった気がした。




また明日から、ちゃんと自分を整えて生きていこう。

ちゃんと、私のままで。