夜になると、考えてしまう。



──私は、まだ“女”として見られてるのかなって。




家では、母であり、妻であり、
日中はただただ“こなすだけ”で終わっていく日々。




でも彼といるときだけは、
そういう肩書きが、全部ふっとぶ。




この前もそうだった。

最初は何気ない会話の中で笑い合ってただけなのに、
彼の手が、そっと私の髪を撫でてきて。

それだけで、体の奥がじんわり熱くなった。





その手が、背中をなぞって、腰にまわって──

まるで、私のスイッチの場所を全部わかってるみたいに。




触れられるたび、溶けていくような感覚。
何も考えられなくなる。




「ねぇ…もっと触れてて」なんて、
普段じゃ言えないようなことも、
彼の前だと、素直にこぼれてしまう。




理屈じゃない。
彼の手が、声が、目線が、
私を“女”に戻してくれる。




この関係が、いつまで続くかなんてわからない。




でも、今この瞬間だけは、
私は彼の中で、ちゃんと
“ひとりの女”になれてる気がする。