あの日帰宅した直後は
ドアを開けた瞬間、
部屋の空気がひんやりしてて、
さっきまでいた場所との温度差に少し戸惑った。
ソファにバッグを置いて、
いつも通りの部屋着に着替えても、
まだ体のどこかに、彼の匂いが残ってる気がした。
助手席で手を繋いでたときの感触。
いつもの場所で、彼に抱きしめられたときの力強さ。
ほんの数時間前のことなのに、
もうずいぶん昔のことみたいに感じる。
──終わると、どうしてこんなに寂しくなるんだろう。
久しぶりにあんなふうに求め合って、
言葉よりも、体の熱で伝わるものがあって、
満たされたはずなのに、
やっぱり“もっと”って思ってしまう。
ベッドに入って目を閉じても、
彼の手の動きや息遣いが頭から離れなくて、
なかなか寝つけなかった。
会えると幸せになる。
でも、会ったあとが、いちばん苦しい。
──それでも、また次が欲しくなる。