N o t h i n g t o b e d o n e ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
あ ら ゆ る も の へ の 見 方 に X 限 界 は な い
A.Banerjeeによる「 ゴドー における不動の動 」論文から
ー 終幕 ー
「 ああ、行こう 」
と 動かないふたりは、
しかし 意識において 動くのだ、
なぜなら、
一見何も残されていないように見える ふたりには、
実は 友情が芽生えたのだから
「 ゴ ド ー を 待 ち な が ら 」
Samuel Beckett
アイルランド出身の 劇作家、小説家、詩人。
20世紀フランスを代表する不条理演劇作家の一人で
1969年に ノーベル文学賞受賞。
" Nothing to be done "
およそアクションの存在が 感じられないベケット劇は、
当然、反アリストテレス的ということになるのだろう。
ところが、今世紀半ば、
フランシス・ファーガスンが
その古典的名著 『 演劇の理念 』 の なかで、
アリストテレスのアクションの 概念を さらに掘り下げている。
出版は1949年で、『 ゴドー 』 が
すでに執筆されていたと 言われる時期だが、
ここでは もっぱらギリシア悲劇の 祭式性について 論じられている。
すなわち、「 目的 」「 受難 」「 認識 」という
古代の祭式で たどられる プロセスが、
『 オイディプス王 』 や 『 ハムレット 』 に おいても
繰り返されるという 事実を 指摘し、
それを 「 悲劇的リズム 」 と 名づけた。
ファ-ガスンにとって、
ギリシア悲劇の アクションとは
この 「 悲劇的リズム 」 のことであり、
さらに 彼は そのアクションを
「 心的生命 の 焦点 」 ( the focus of psychic life ) と
言い換えている。
劇のアクションとは、
何らかの生命力、 精神のエネルギーのことで、
それこそ、 他のいっさいが 剥奪されても
最後のところで
劇 を 劇 た ら し め る 本 質
と い う こ と に な る の で あ る 。
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ベ ケ ッ ト 劇 の 〈 場 〉
http://www.lingua.tsukuba.ac.jp/~cato/beckett.html
Institute of
Yukio Kato氏
文藝言語研究23号, 19-35, 筑波大学文芸言語学系