グーグルの野望 (フィナンシャルタイムス) | カフェメトロポリス

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電脳世界と現実世界をいきあたりばったり散歩する。

毎日チェックするウェブサイトの一つにITアナリストのニコラス・カーのRough Type

というブログがある。http://www.roughtype.com/

ITというものが、電気やガスのような公共事業(Utility)的になっていくというビジョンで、既存のITサービスについて、ユーザーの観点から、冷徹な批評を行っている。「ITにお金を使うのはもうおやめなさい(IT doesn’t matter)」という本も広く読まれ、IT業界で物議をかもした。

そのブログが、フィナンシャルタイムスのGoogle’s goal: to organise your daily life

(グーグルの目標;あなたの日常生活を組織化すること)という記事をハイライトしていた。Caroline Daniel とMaija Palmer署名の記事。

http://www.ft.com/cms/s/c3e49548-088e-11dc-b11e-000b5df10621.html

グーグルが、集めたユーザーの個人情報を最大限活用したいという野望は、きわめて大きい。同社は、いつか、検索エンジンがユーザーに、どんな仕事につくか、今日一日どんなふうに過ごすかなどをアドバイスするような日が訪れるのを想像しているようだ。

グーグルのCEOのエリック・シュミットは、より多くの個人情報を集めることは、同社の拡大戦略の中核に位置し、世界の情報を組織化するという企業ミッションの論理的延長上にあると言っている。

5年後のグーグルは?という質問に対して、シュミット氏は、「グーグルは自分たちが持っている情報の使い方については、いまだかなり初期の検討段階にある。5年後はアルゴリズムも改善し、パーソナル化も進むだろう。」と答えた。

The goal is to enable Google users to be able to ask the question such as ‘What shall I do tomorrow?’ and ‘What job shall I take?’ ”

「目標は、グーグルのユーザーが、明日何をするか、どんな仕事につくかのような質問を聞けるようにすることである。」

個人情報に関する包括的なデータベースの蓄積競争は、企業がパーソナル化した広告をユーザーに提供することが認められるようになるにつれて、検索エンジン業界における新しい戦場となっている。これは検索業界にとっての至上の目標(Holy Grail)であり、高い広告料を得るための戦いなのである。

シュミット氏はロンドンのジャーナリストに対して、「我々は、個人について十分な知識がないので、もっとも基本的な質問にも答えることができないのです。グーグルの拡大のもっとも重要な要素はそこにあります。」と答えた。

グーグルの新しく再発表されたiGoogleサービスは、ユーザーに対して自分のグーグル検索ページのパーソナル化を可能にし、自分自身のコンテンツを発表できるようにするのが主な特徴になるらしい。

別のサービス、グーグルのパーソナル検索は、2年前に発表されたが、ユーザーに対して、グーグルがそのウェブサーフィングの履歴、何を検索したか、何をクリックしたかを蓄積することを認め、その結果からよりパーソナル化した検索機能を構築することが目的だった。開発途上の別のサービスとしては、グーグルレコメンデーションがある。これは、既に作成されたユーザーの好みに基づいて、検索エンジンがユーザーが好むような製品やサービスを提示するというものだ。グーグルはこれらのサービスに対しては、まだ広告を売ってはいない。しかし、そのうちにこのサービスを使ってより絞り込んだ広告をユーザーに対して示すことが可能になる。

ヤフーはプロジェクト・パナマと呼ばれる新しい検索技術を今年明らかにした。これによってユーザーがポータルで使っているものをモニターし、その情報を使ってユーザーの関心のプロフィールを作るのだ。このプロフィールを使って、広告をもっとも関心のありそうな人々に対して届けるという考えである。

イギリスに本拠を置く検索会社のオートノミーはトランザクションハイジャックという技術を開発している。これはインターネットサーファーがオンラインでの購入を行うのをモニターし、より安い選択肢を指摘するサービスだ。このようなモニタリングがプライバシーの問題をひきおこすが、グーグルはiGoogleやパーソナル化はあくまでもユーザーが選択可能なサービスであるという点を強調している。

英国のThe Information Commissioner’s Officeはパーソナル化技術分野の開発については懸念していないといった。

しかし、今年のはじめに、グーグルは、ユーザーが行ったインターネット検索についての情報を維持する期間を2年に限ることを約束することで、米国と欧州のプライバシーアクティビストからの懸念に対応している。

グーグルは、現在提案しているダブルクリックへの31億ドルの買収がオンラインプライバシーの侵食につながるのではという懸念にも直面している。

この不安は、ダブルクリックのクッキー(同社がどのサイトにユーザーが訪問しているかをトラックするためにユーザーのPCに置いているソフトウェア)からの情報をウェブ検索の記録と結合することで、人々の行動についてのより詳細なイメージが構築される可能性があるという懸念によるものである。

シュミット氏は今年、グーグルがこういった懸念を和らげるための技術を開発中であるといった。

(以上)

検索がどんどん便利になるということは魅力的である。その一方で、考えかたの枠組を自動的に制限されていくことへの息苦しさのようなものを感じているのも事実だ。グーグルがどんどん便利になると同時に、それ以外の自力での情報検索の道が存在するということが、並存するのが一番のような気がする。

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