always ⑮ 後編 | 嵐の勿忘草

嵐の勿忘草

忘れたくないけど忘れてしまうこと
忘れたいけど忘れられないことでも

パチっといきなり明るくなった。

 

 

「サトシ?何してんの?」

 

「あ、おかえり」

 

ショウが仕事から帰ってきた。

 

 

「んーちょっと勢いよく転んじゃって。

痛みが落ち着くまで寝っ転がってようと思って」

 

「え?そんな?怪我は?」

 

「それは今から確かめようと思ってる」

 

「動ける?」

 

うーん?腕は・・・痛みなく動く。首も大丈夫そう。

頭も怪我はしてないだろう。

もう痛みがないから。

少しずつ体を動かしていく。

 

ショウが僕の横に跪いて僕の顔を心配そうに覗きこんだ。

天井に向かって突き上げた腕をショウの首に回した。

ショウが僕の背中に腕を差し込んで起こしてくれる。

 

立ち上がろうと膝を立てて足を床に付けた時、痛みが走った。

あーやっぱり足首がやられてた。

 

 

「左の足首、ひねったみたい」

 

「他は大丈夫そう?」

 

「うん、他は痛いところないから」

 

「とりあえず、ソファーに移すよ」

 

ショウが抱き上げてくれようとすると痛みが強くなる。

顔をしかめたことに気がついたのか?

 

 

「治せる?」

 

首を振った。

治そうとしてみたけど・・・治せない。

ショウの怪我ならいくらでも、すぐにでも治せるのに。

 

ショウが困った顔をして僕の足首に口唇を寄せる。

優しく触れるだけのキスをしてくれると。

途端に痛みが引いた。

 

 

いつの頃からか、僕は自分の怪我を治せなくなった。

ショウが治すように願ってくれないと治せない。

 

 

「ごめん」

 

ショウは自分のせいだと思ってるけど。

それは違う。

僕が弱いせい。