voice 15 | 嵐の勿忘草

嵐の勿忘草

忘れたくないけど忘れてしまうこと
忘れたいけど忘れられないことでも

「すまなかった。

赦してほしい、とは言わない。
どれだけ自分がひどいことしたか、自覚があるから。
ずっと一緒に、って。一生をを共に。って誓い合ったのに・・・逃げ出した。

生きるのを諦めてる、生き続けるのを拒否してる。
ニノがそう言ってた。
サトシを助けて、って。
俺にサトシの気持ちを確かめて欲しい、って頼まれた。

ここに連れて帰ってもらったのは・・・
サトシの気持ちを知るために・・・・躰・・つなごう思ったから。

どうして・・・思いつかなかったんだろうね?
サトシの気持ちが見えない、って。
苦しかった・・時に・・・・」

寂しそうに微笑んだ。


「動くこともできないサトシを抱くなんて・・・
むりやりするみたいで・・・抵抗があった。
サトシは・・待っててくれてたのかな?
それすらも・・分からなくなってて。

触れることが・・・怖かった。

いや・・・本当は・・・サトシの本心を知るのが怖かったんだと思う。
憎まれていないか。嫌われていないか、って。
こんなになったのはショウのせいだ、って責められるのが怖かった」

ベッドに伏せたから、顔は見えなくなった。
でも・・・呻くように口からもれる嗚咽が・・・
ショウもツラかった、ってことを教えてくれた。


僕は・・・抱いてもらいたかったよ。
ショウの手が僕に触れるたびに・・・待ってた。
憎んでなんて、嫌ってなんていない。
怖がることはなかったのに。
でも・・・こんな意思表示もできない相手に・・・は・・
できない・・だろうね。

ショウは一人で・・頑張ってくれてたんだもんね。
あの時まで・・・しあわせだったよ。
ショウがいつも側にいてくれて。

指先にショウの髪が触れた。
ちょっとしか動かせないけど。
今は手首から先が動かせる。
髪をいじるように指を動かした。

ショウがそれに気付いた。


「サトシ・・・手・・動くようになったんだね?」

嬉しそうに笑って。
僕の手を取った。
指先にキスをしてきたから・・・
お返しするみたいに、ショウの口唇を撫でた。