To be free 9 | 嵐の勿忘草

嵐の勿忘草

忘れたくないけど忘れてしまうこと
忘れたいけど忘れられないことでも

「サトシは・・・こんなに泣き虫だったんだね」

ショウが腕枕している腕を折って、僕を引き寄せた。
泣きすぎて、腫れてしまった目蓋にショウの熱い口唇が触れた。


「ショウのせい・・だよ。涙が出てくるの」

「俺と会えなかった3年間。
サトシはどれほどの涙をこぼしたのか・・って考えると・・
胸が苦しいよ。

もっと、早くサトシの元へ来るべきだったんじゃないか・・って」


ショウも泣きそうな顔をする。
僕はショウの頬に手を添えた。


「3年間・・僕は・・・一度も泣かなかったよ。
だから・・・そんな後悔しなくてもいい。
ショウのやるべきことがあった3年間なんだから・・・」

「信じられないよ。
昨日から、サトシの泣き顔ばっかり見てる」

二人きりになると、泣いてばっかりだもんね。


「ショウ・・僕はね・・弱いんだよ。
弱いから・・泣けなかった。
それに・・・ショウを信じてたから。
泣いたら・・・ショウのこと疑うことになっちゃうみたいで」


一度泣いたら・・自分が崩れてしまいそうな気がしてた。
崩れてしまったら、もう、立ち上がれない。
そんなふうに感じてた。

ショウともう一度、会うためには泣けない。
そんなことを自分に言い聞かせて。


誰にもショウのことを言わず。
唯一、ショウのことを知っている親とも話さず。

誰かに何かを言われて、自分が揺らぐのが怖かった。


ショウへの想いは、僕だけが分かっていればいい。
そうやって、過ごした3年間。


「でも・・今は泣いても、ショウが全部受け止めてくれる。
嬉しい涙だし・・・どうしようもない気持ちが涙で出てくる」

ショウが愛おしくてしょうがない。
って、キスをこめかみにしてくれるから・・
僕の目からは、また涙がこぼれた。