Still... 26 | 嵐の勿忘草

嵐の勿忘草

忘れたくないけど忘れてしまうこと
忘れたいけど忘れられないことでも

「行ってくるね」

椅子にうなだれたままのショウの頭のてっぺんに口唇を落とした。
フワッと、コロンの香りと、ショウ・・の匂いがした。

ショウの頭をしばらく抱えるようにして。

闘いに行くのに、必要な力をもらった。


最後にもう一回。
てっぺんにキスをして。
ショウの匂いを大きく吸い込んだ。


「行ってくる」

ショウから離れてドアに向かった僕を。
ショウの声が追ってきた。


「俺も・・俺も行く」

僕のことを腕に入れた。
ショウは・・・ちょっとだけ震えていた。
武者震い・・みたいなもの?
それとも・・・
ショウは・・恐いのかな?
自分の親のことを恐いって思う。
それが僕には分からないけど・・・

僕の知らない社会ならではの・・親子関係があるのかも・・



お互いを励ますようにして。


僕らは手をつないだまま、部屋を出た。




思った通り。
警備が厳重にされている部屋。
ショウがいるから、フリーパスで通れる。

僕に対して怪訝な顔をしていたけれど・・
制止はされなかった。



ノックして、ショウが中に声をかけた。



「ショウです。入ります」