『簡単そうで難しい問題』についての解説(3) | 私らしさを大切にしよう! -自己発見、自己受容から自己成長そして平和な社会へ-

私らしさを大切にしよう! -自己発見、自己受容から自己成長そして平和な社会へ-

私らしさの心理学研究会代表 和泉光則のブロクです。
講習会などの情報の他、活動情報、日々の雑感などを
綴っていきます。

さあ、なにかスッキリしないこの問題のからくりについて、私なりの解説をしてみます。

 

まず、大切なことは、

「もしこれをコンピュータが解いたら、2つの問題はほぼ同じ演算時間で解いてしまうであろう」

ということ。つまり全く同一の論理展開で、単に数値だけが異なっているわけですから。

 

しかし、もう一つ大切なことがあります。それは、

「でも人間の頭脳は、この2つの問題を全く異なる思考(認知)で捉えてしまい、その結果、答えにたどり着くことがきなくなってしまう」ことです。

この問題は、『人の認知は、コンピュータとは違ってきわめて不完全だ』ということを、思い知らせてくれます。

 

この不完全さの原因には、なにか2つが考えられそうです。

 

ひとつは、「人の頭脳は、過去の記憶を参照することで手っ取り早く答えにたどり着こうとする」という認知プロセスからくる、ヒューリスティックなエラー。

「29,000円は30,000円とほぼ同じ、違いは1,000円、とすれば、、、」という形で問題に囚われてしまい、どうしても(適切ではない)支払い合計金額から計算に入ろうとしてしまいます。

でも本当に大切なのは「お客が実際に支払った金額」であり、27,000円から出発するべきなのです。

しかしこれが中途半端な金額に思え、「総額30,000円」から考えていこううとしてしまう。

 

ふたつめは、「お金の計算のミスは許されないこと」というイラショナル(非合理的)な信念に、多かれ少なかれ人は囚われてしまう、ということです。

つまり、「合計金額が合わない」という事実を目の前にすると、無意識的に「やばい、計算できない私はダメな人間だ」のような”焦り”が湧いてきて、スッキリした解答(金額計算の一致)をとにかく急ごうとしてしまう。

これは「ひとつひとつ順序立てて計算し、答えにたどり着く」という、アルゴリズムとおりに粛々と進むコンピュータには存在しない「心の揺れ動き」ですね。

 

人の認知は、過去の記憶を参照するという非常に効率的なプロセスを有する反面、過去の経験が論理的思考を歪めてしまうというマイナス面もある。授業ではこんな話をしました。

 

人間って、これほどまでに不完全なもの。

ただ、不完全だから人間はおもしろい。その不完全さが持ち味なわけです。

つまり、人はみな、自分らしくていいわけです。