夫と私は、5年のおつきあいを経て結婚しました。
私は結婚してからも新卒で入社した会社で仕事を続けていました。
事務職でしたが、いわゆる事務系総合職というやつで、会社での扱いは同期入社の男性社員と同じです。
結婚したころの私は、会社での立場も若手から中堅に移りつつあり、仕事の量もレベルも年々増していました。
一方で、先輩や上司に教えてもらってきたノウハウが少しづつ蓄積し、さばける仕事が増えてきたことに、自信がつき始める時期でもありました。
就業規則では始業は8時半からでしたが、私がお世話になっていた部署には就業規則以外の不文律のようなものがあり、男性職員は毎日7時45分には出社して、打ち合わせ等の業務を行っていました。
私も総合職という立場上、また、打ち合わせに出ないわけにはいかないし、結婚後も早くに出社していました。
私が家を出るのは7時。帰宅は20時から21時ごろ。繁忙日には23時帰宅ということも多かったです。
一方、夫が家を出るのは8時半。帰宅は19時から20時ごろ。
私は毎日朝の5時半に起きてお弁当や朝食の準備をしていたので、夜は23時には寝ていました。
当然、夫と生活のリズムが合いません。朝、夫を起こさないようにと寝室も分けてしまいました。
このような結婚生活で、家事等は何とかこなしていましたが、どうしてもすれ違うことがさびしくて、仕事を辞めることを何度か夫に相談したことがあります。
専業主婦になって生活水準が落ちてしまうのが嫌なら、別の仕事を見つける。
でも、このまま総合職で男の人と同じように働き続けていては子供を持つことも叶わないと思うし、あなたと一緒の時間をもっと作りたい。せめて働きを見直したい。
そう言い続けていました。
しかし、夫から返ってきた言葉は、「仕事は絶対辞めるな。俺は小遣い制で生活するなんて絶対嫌だから家計は預けない。どうしても辞めるなら仕方ないけど、そのあとはどうなっても知らないよ。」というものでした。
結婚したときに、家計を一緒にしましょうと提案したのですが、夫は頑なに拒否しました。
今思えばおかしいなと思うことがたくさんあって、家計のこともその一部だったのですが、当時は旦那の同期たちもまだ半分くらいが独身生活を楽しんでいた時期でもあったため、少しの間くらい、好きなようにしてもいいかなと思っていました。
子供ができたりして私が働けなくなるまでは、自分で稼いだお金を自分で使う自由くらいは楽しんでもらってもいいかもしれないと。
しかし、私が仕事を辞めることに上記のような理由でずっと反対され続けたため、私もなんだか不安になってしまって、仕事を続けていました。
また、男女共同参画が叫ばれて久しく、私も小学校から「女性も結婚しても働き続けてよい。男女平等の世の中で、男は仕事、女は家庭という概念にとらわれる必要はない」と教育されてきたため、なんとなく「結婚してからも女だって働くものだ」と思っていました。
私自身も総合職で男性と同じように働いていたため、会社で責任を持って仕事をすることの大変さというものを身をもって知っていたということも、影響していたように思います。
逃げたいと思うこともある、つらい仕事もある、でも、家族のために辞められない。今日も家族のために頭を下げて、言いたいことをぐっと飲み込んで・・・。
そんな男の人の立場に、私も立って、夫が背負うものを分かち合えたら。
お互いに励ましあって、乗り越えていけたら。
そう思っていました。
また、私が大学在学中に父に末期がんの宣告があり、入社して間もなく父は亡くなっています。
父は自営業者であったため、代わりの人に仕事を頼むことが難しく、投薬治療中のつらい体をおして、私たち家族のためにと働いてくれました。
父が命を削って大学を出してくれて、その結果、私は大卒総合職として入社できたと思っていました。
入院中も、父は「しょっちゅう見舞いには来なくていい。仕事が大変だろうから、そっちをきちんとしなさい。」と言っていました。
父が逝く前に、「私はお父さんのおかげで会社にも入れたし、心配しないで」と言いました。
もうしゃべることができなくなっていた父は、それでもそう言った私の手を強く握ってくれました。
こんな経験があったため、ぎりぎりまで頑張ってみよう、まだやれるはずだから、限界までやってみようと思っていました。
夫との生活のために仕事を辞めたといっても、父は喜んでくれたと思います。
しかし当の夫がそれを望んでいないなら、今はその時ではないのかもしれない・・・そう思って、今日まで過ぎてしまいました。
生活リズムがずれている妻。
家計が別々の妻。
平日は仕事。休日は普段できない家事を片付ける妻。
私は月1回のペースで泊りの出張や休日出勤もあったため、夫が不倫をするための格好の環境であったと思います。
ただ、当たり前ですが私は夫に不倫をしてほしくて働いていたわけではありませんでした。
お互いに支えあえる存在でありたかった。
そのために真面目に働いてきたつもりですし、仕事以外の時間は家庭のために使っていたつもりでした。
家と会社の往復で、ただがむしゃらに働いていました。
だから夢にも思っていませんでした。
夫が不倫していたなんて。
しかし、その事実がわかるまでのカウントダウンは確実に始まっていたのです。