制限行為能力者制度においては、制限行為能力者という弱者保護のため、以下の場合に、原則として制限行為能力者がした法律行為(意思表示)を制限行為能力者側から取消すことができます。
①未成年者制度
未成年者が保護者の同意なく行為をした場合
②成年後見制度(法定後見制度)
1.成年被後見人
成年被後見人が財産上の行為をした場合
2.被保佐人
10種類+αの行為において、被保佐人が保護者の同意なく行為をした場合
3.被補助人
同意権付与の審判を得た範囲(10種類の行為の一部)の行為において、
保護者の同意なく行為をした場合
~任意後見制度~
任意後見制度は、将来に意思能力が弱くなる場合に備えて行う後見人との
委任契約による保護制度のことですが、この場合は、将来の保護者に代理権
を与えるものであり、同意権を与えるものではないので、被保護者の行為能
力は制限されません。よって、任意後見制度は、法定後見制度と似た趣旨で
はありますが、正確には制限行為能力者制度ではありません。
【取消権者】
制限行為能力者制度の全ての場合において、本人と保護者に取消権があります。
取消行為は、行為を最初からなかったことにする行為ですので、本人の法律関係
は元に戻るだけですので、不利益にはなりません。なので、本人も取消できます。
【取消の効果】
行為は最初から行われなかったことになり、取消可能な行為によって成立した法律関係はもともとなかったことになります。
なかったことになるなら、何もしなくて良いかというと、そうではありません。
①未履行の場合
つまり、契約などの行為したけど、物の引渡しや代金の支払いはまだ行っていない
場合は、何もする必要はありせん。取消の意思表示をするだけで終わりです。
②既履行の場合
お互いに、お互いの状況を行為前の状態に戻してあげる義務が発生します。
お互いが給付された物(引渡された物と現金)を返してあげるわけです。
それだけではありません。給付によって得た利益もあるはずです。それも返して
あげます。引渡された物が車なら車の使用利益(レンタルした場合のレンタル料
など)、現金であれば法定利息などです。つまり全部返すわけです。全部です!
この元の状態に戻してあげる義務を現状回復義務といいます。
ただし、大切な例外があります。
~例外の制限行為能力者~
契約当事者の一方もしくは双方が制限行為能力者の場合、制限行為能力者には
現状回復義務は発生しません。現存利益返還義務が発生するに限ります。
取消されたその時に、維持している分だけを相手に返せば良いとなります。
現存利益返還義務については、後日改めて記事にします。
要するに、制限行為能力者であれば、相手に返す物が少なくて済むということ
です。今はこれだけを覚えて下さい。