【被補助人とは】

家庭裁判所により補助開始の審判を受けた者のことです。

 

【補助開始の審判の条件】

精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者と認められることです。

具体的には、軽度の認知症患者や軽度の精神疾患者です。

 

【審判請求できる人】

本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官です。検察官が請求することはほとんどありません。

ここで、本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意が必要に

なります。本人以外の者が勝手に審判請求することはできません。軽度の認知症患者のレベルであれば、自分に保護か必要かどうかは分かります。本人が大丈夫と言っているなら大丈夫であって、他人がそれ以上どうこういう必要はありません。

ちなみに、成年後見制度の理念(可能な限り健常者と同様に扱う。本人の意思の尊重)から考えても、本人の請求意思は必要ですよね。

 

【補助開始の審判がされると】

補助人が付きます。また、補助人の仕事を監督するために、補助監督人を付ける場合もあります。

そして、ここがポイントですが、補助開始の審判は必ず「同意権付与の審判」もしくは「代理権付与の審判」と一緒にしなければなりません。なので、パターンとしては

1.補助開始の審判+同意権付与の審判

2.補助開始の審判+代理権付与の審判

3.補助開始の審判+同意権付与の審判+代理権付与の審判

の3パターンです。

 

【被補助人の行為能力】

被補助人には行為能力があります!行為能力は制限されません!

「えっ」と思いますよね?けど、制限されないんです。正確に言うと、補助開始の審

判を受けただけでは、行為能力は制限されずに、あらゆることが1人でできます。

軽度の認知症患者ですからね。聞いた話ですと、病院に行く頃には中度程度になって

いる場合が多いようです。なんか怪しいけど、思い過ごしだったら恥ずかしいし、病院に行く程でもないかな?と思っている程度ということですね。だから、全ての行為が1人でできます。

それじゃ、補助制度なんて意味ないように感じますね。

次のようなケースを考えてみて下さい。不動産業を営む高齢者が、判断能力に衰えを感じ始めた。大丈夫だとは思うが、仕事が仕事なので、認知症の診断を受けたところ、初期の認知症であることが判明した。仕事を続けるのに自信をなくし仕事をやめたいが、借入金もあり今直ぐにやめるわけにもいかない。このようなケースです。

このような時に、補助開始の審判請求と同時に、同意権付与の審判を請求し、補助人に同意権を与えます。そうすることで、補助人の目を通ったもののみ、有効になるので、安心して仕事ができるというようになるわけです。

 

【同意権付与の審判】

被補助人には、ある程度判断能力があるので、被補助人本人が同意権を与えるかどうかを決めることができます。本人が他人の同意なんかなくても大丈夫と思っているなら、他人が勝手に同意権付与審判請求はできません。というわけで、本人以外の者が同意権付与の審判請求をするときには、本人の同意が必要になります。

同意権の内容は、保佐人が持つ10種類の内容の中の一部に限定されます。あくまでも一部です。全部必要なレベルとなると、それは補助開始の審判でなくて、保佐開始の審判が必要になる判断能力ということになってしまうからです。

また、同意権付与の審判は随時請求でき、同意権の内容を増やしたり、減らしたりできます。

 

【代理権付与の審判(保佐人への代理権付与の審判と同じです】

代理権付与の審判と同意権付与の審判は全くの別物です。

付与される代理権の範囲に制限はなく、随時付与すること、また、付与した代理権の全部または一部を取消すことも随時可能です。

補助人への代理権の付与は、権限の範囲に制限はなく、本人の希望があり、家庭裁判所が認めれば、いつでも可能です。代理権付与の審判があっても、被補助者は行為能力が制限されないので、1人でその法律行為をすることもできます。

 

【補助人の義務】

成年後見人や保佐人と同じ義務を負います。

①善管注意義務、②意思尊重義務、③身上配慮義務

です。

 

【補助開始審判の取消】

前回までに書いた審判取消と同じですので、略します。