【被保佐人とは】

家庭裁判所の保佐開始の審判を受けた者です。

 

【保佐開始審判の条件】

精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者であると認められること。具体的には、中軽度の認知症患者や精神疾患者など。

(補足)被後見人…日常の買物すら1人で満足にできないレベル

    被保佐人…日常の買物なら1人でできるが、不動産取引などの重大な財産取引

         となると1人でできないレベル

    被補助人…重要な取引でも何とかできそうであるが、不安があるレベル

 

【家庭裁判所への審判請求者】

本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官です。

(補足)検察官が請求することはほとんどありません。老人保護法などの特別法により市町村長が請求することになるからです。老人保護法は民法の特別法にあたるので、市町村長が請求できる旨は民法に必要ありません。

 

【保佐開始の審判を受けると】

保護者として保佐人が選任されます。また、保佐人の仕事ぶりを監督する保佐監督人

が選任されることもあります。

 

【被保佐人の行為能力について】

基本的には1人で出来ますが、次に挙げる10種類の重大行為、及び、被保佐人が1人で行うのが不安な行為(※)に関しては、被保佐人の行為能力を制限し、保佐人の同意を必要とすることで、被保佐人を保護しています。同意を得ないでした場合には、取り消すことができます。

※法定されている10種類の行為以外の行為に保佐人の同意を必要とする場合には、

 その行為について、家庭裁判所の特別の審判が必要になります。

 その特別の審判の請求は随時できます。

 被保佐人が不安に感じたときに付加えたり、また、もう大丈夫と感じたときに

 減らしたりすることを、その都度できるということです。10種類の行為に関して

 は必ず保佐人の同意が必要になる法定事項ですので増減させることはできません。

 10+αの「α」の部分を都度増減できるということです。

 

一 元本を領収し、又は利用すること。

  ⇒元本を受取ることは、債権を失うことを意味するので、被保佐人にとって

   マイナスになることがあります。

二 借財又は保証をすること。

  ⇒借金や保証人になることは重大行為ですよね。

三 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。

  ⇒不動産取引などの重大な財産行為と覚えて下さい。

四 訴訟行為をすること。

五 贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法(平成十五年法律第百三十八号)第二条第一項に規定する仲裁合意をいう。)をすること。

  ⇒裁判手続き関係と覚えて下さい。

六 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。

七 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。

  ⇒相続関係と覚えて下さい。

八 新築、改築、増築又は大修繕をすること。

九 第六百二条に定める期間を超える賃貸借をすること。

  ⇒賃貸借契約(動産半年、建物3年、土地5年)と覚えて下さい

十 前各号に掲げる行為を制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第十七条第一項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の法定代理人としてすること。

  ⇒制限行為能力者が制限行為能力者の法定代理人では、代理される側の制限行為

   能力者を保護することは当然無理です。なので、被保佐人が法定代理人として

   上記9種類の行為を行うことは1人ではできず、保佐人の同意が必要ということ

   です。

   ただし、制限行為能力者の保護者から委任されて、被保佐人が任意代理人とし

   て行う場合はOKです。その保護者は保佐人と分かって依頼しているので。

 

【保佐人が同意してくれなくて困ったとき】

保佐人が、被保佐人の利益を害するおそれがないのに同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができます。保佐人のことで困ったことがあれば、家庭裁判所に助けてもらうわけです。

 

【被保佐人の権限】

・取消権のみ(10+αの法律行為に限ってです)

 

【保佐人の権限】

・同意権(10+αの法律行為に限ってです)

・取消権(10+αの法律行為に限ってです)

・追認権(10+αの法律行為に限ってです)

 

【保佐人の代理権について】

保佐人には、保佐開始の審判とは全く別物の審判によって、代理権が与えられることがある(代理権付与の審判)。代理権は、あくまでも本人の意思により与えられるものなので、本人以外の者が代理権付与の審判請求をするときには本人の同意が必要となる。付与される代理権の範囲に制限はなく、また、必要と思ったときに随時付与でき、また、与えた代理権の全部、一部を随時取り下げることもできる。

保佐人に代理権を付与したからといって、被保佐人の行為能力は制限されない。保佐人に自分の代わりにやってもらえると共に、自分でもその行為を行うことができる。

代理権付与の審判は、被保佐人の行為能力を制限するものではありません。

 

【保佐人の義務】

成年後見人と同様に①善管注意義務、②意思尊重義務、③身上配慮義務があります。

 

【保佐開始の審判等の取消し】

被保佐人の判断能力が回復した場合、または、悪化した場合には、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判を取り消さなければならない。

悪化した場合には、後見開始の審判が下されます。

後見開始、保佐開始、補助開始の審判は、判断能力の程度に応じて、いずれか一つのみが適用されます。