失踪宣告というのは、配偶者にとって、新しい人生をリスタートさせる切掛けにもなります。失踪宣告がされ死亡擬制されることで、離婚を成立させることができ、新たなパートナーとその後の人生を歩むことができます。

失踪宣告という制度がないと、生死不明の状態なのに、失踪者との婚姻に縛られる前向きとは思えない状況になります。(もちろん、失踪者を愛していて待ち続けるというのは素晴らしいことだと思います)

 

というわけで、配偶者は再婚したとします。しかしその後に失踪者が急に現れたらどうでしょう?状況は混乱することは間違いないですね。そこで、法令は混乱の解決策として次のように考えています。

 

まずは、憲法24条です。

「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。」

 

婚姻は両性の合意のみに基づいて成立するのです。つまり、お互いに婚姻をしたいという強い愛があれば、誰にも邪魔されず婚姻できるということです。

例え、失踪宣告が取消されたとしても、再婚の当事者がお互いに強い愛情を抱き、婚姻を継続したい意思があれば、急に現れた失踪者に邪魔されることなどありません。

また、逆に、「やっぱり失踪者のことが好き。この人と人生を歩んで行きたい」と思うのであれば、また、元失踪者もそう思うのであれば、婚姻関係を失踪前に戻すこともできます。新しいパートナーに邪魔されることはないのです。

 

これを法律はどのように理由付けしているかというと、次のようになります。

A:失踪者

B:配偶者

C:Bの再婚相手

繰り返しになりますが、婚姻は両当事者の真意を尊重すべきです(憲法24条)。

なので、BとCの善意・悪意に関わらず、AとBの婚姻は復活しません!!

BとCとの婚姻継続の希望は100%かなえられます!!

一方で、AとBが共に婚姻関係の復活を望む場合には婚姻は復活するのですが、

法律は「Aが突如現れた(失踪宣告が取消された)ことで、BのAへの愛情が再燃したこと」を「BとCの間の婚姻について、その婚姻を継続することが難しい重大な理由」

と捉えます。これによりBとCの離婚が可能になり、AとBは再婚することができます。

 

婚姻もまた、私的自治の原則に沿って考えられており、公共の福祉に反しない限り、

国民の真意の実現に尽力する民法の姿が見えてきませんか?