失踪宣告制度について

 

①前説

この制度を簡単に言うと、長い間、音信不通で、生きているのか、死んでいるのか分からない状態にあるなら、死んだことにしてしまおう!という超過激なルールです。

生死・行方不明者にとっては堪ったものではありません。勝手に死んだことにされるのですから。そう考えると、この制度は生死・行方不明者のためにあるわけではないということが分かると思います。

それでは、誰のための制度なのか?人の生死は超デリケートな問題です。絶対に赤の他人が決められるものではありません。家族ですらどうなのかと思いますが、決められるとすれば、最低限、家族か家族と同等な立場にいる者ではないでしょうか?

 

②本題

失踪宣告制度をきちんと説明すると、不在者が一定期間生死不明となっている場合に、不在者の法律上の利害関係人の請求を受けて、家庭裁判所が不在者を死亡したものとみなす制度です。

 

【失踪宣告の最も重要な論点】

  「法律上の利害関係人って誰?」

          ↓ 

  答え:「失踪宣告によって直接に権利を取得し、または、義務を免れる者」

          ↓

        で、具体的に誰なの?

          ↓

  〇法律上の利害関係人にあたる人の例

   1)配偶者

     ※配偶者は相続の他、再婚し新たな人生をリスタートできるようになる

      メリットを得られます。

   2)推定相続人(先順位相続人)

   3)受遺者

   4)生命保険の受取人

  

  〇法律上の利害関係人にあたらない人の例

   1)債権者

   2)後順位相続人

     ※先順位相続人が存在する場合には、後順位相続人は相続人に

      なれません。つまり、直接的に相続人になるわけではありません。

   3)検察官

  

  最低限、家族または、家族に近い関係にある人というのが分かってもらえる

  と思います。「最低限」というのは、兄弟姉妹など単なる家族ではダメです。

  プラス利害関係がないといけません。

 

さて、一定期間というのは、どれくらいでしょうか?

 1)不在者の生存が証明された最後の時から7年間(普通失踪)

 2)戦争が止んだ時、船舶が沈没した時、またはその他の危難が去った時から

   1年間(特別失踪)

の2つの期間が設定されていて、この期間が経過すると、上記利害関係人は家庭裁判所

に失踪宣告の請求をすることができます。

 

ここまでをまとめます。

 失踪宣告の要件

  ①一定期間生死不明の事実

  ②利害関係人が家庭裁判所に請求すること。

  ③家庭裁判所の宣告

   

~追記1~

前回に書きましたが、人は死亡することでのみ権利能力を失います。

なので、生死・行方不明の不在者は、たとえ失踪宣告をされていても、実際に死亡していない限り、権利能力を失うことはありません。なので、生存している居所において、権利の主体となって法律・経済活動を行うことは可能です。

 

~追記2~

生死不明の不在者の財産上の利害関係人(債権者が代表例)も、不在者と連絡が取れずに困ることになる。このような場合には、家庭裁判所は、利害関係人からの請求により、不在者に不在者財産管理人を置き、この管理人が時には家庭裁判所の監督を受けながら、原則として、不在者財産の維持に努め、必要な場合には処分を行うことになる。つまり、債権者などの財産関係のみの利害関係人は不在者財産管理人選任請求をすれば問題を解決できるので、失踪宣告をする必要はない。

 

~追記3~

失踪宣告がされた場合に、不在者はいつ死亡したとみなされるのでしょうか?

普通失踪のときは、7年経過した時に死亡したことになります。

特別失踪のときは、危難が去ったその時に死亡したことになります。