静的安全の保護とは、簡単に言えば、正当な権利者の権利を保護しようという考え方であり、民法の基本的な考え方です。

私的自治の原則から、人は自分の意思に基づいて権利義務関係を形成できます。これを逆に言うならば、人は、みだりに権利を制限されたり、義務を負担させらりたりすることはありません。正当な権利者の権利というのは守るに値するわけです。

 

動的安全の保護とは、権利の移動(変動)を優先的に保護しようという考え方です。

資本主義において経済活動(取引)が活発になることにより、その取引の円滑性と安全性の確保が求められるようになり、そのような社会的要請から生まれた考え方です。つまり、正当に行われた取引による効果を法律で守ることにより、安心して経済活動(取引)ができるようにしたわけです。

 

法律関係・権利義務関係において紛争が生じた場合、民法の原則的立場である静的安全の保護を優先し、正当な権利者の権利保護を貫通しようとすると、現実的に妥当と思われる結果からは程遠い結果となってしまうことがあります。

そのような場合に、通常人から見て、妥当と思われる結果(保護されるべき人がきちんと保護されるような結果)を導くために、動的安全の保護の視点を紛争解決に用います。

つまり、静的安全の保護と動的安全の保護の2つの視点から問題となっている法律関係・権利義務関係を検討し、それにより社会的に妥当な結果を導き出すということです。

 

まとめますと、民法の原則は静的安全の保護。ただし、それを貫いて考えたのでは社会的に妥当な、通常人が納得できるような結果が導き出せない場合に、動的安全の保護の視点から検討し、調整を図るということです。