次のステージに向かうアリッサ・シズニー icenetwork翻訳 | WFS JAPAN

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Czisny pursues skating, only in different direction
by Vladislav Luchianov
special to icenetwork



2度の全米チャンピオンであるアリッサ・シズニーは現役生活の幕を閉じ、次に進むことに幸せを感じている -Getty Images


ここ10年の間で最もオリジナリティ溢れるスケーターの一人であるアメリカのアリッサ・シズニーが、オリンピック代表になるという夢を諦めるという最も困難な決断を下してから6ヶ月が過ぎた。

このエレガントなスケーターのキャリアには心躍るような高みと、胸痛む谷底とがあった。このような相反する事実にもかかわらず、2度の全米女王、かつ2010年GPF覇者である彼女は、彼女の母国アメリカと、そして世界各国の氷の上で、最も愛されるスケーターの一人である。

彼女の広いアピールは多方面に渡っている。その中でも彼女が毎回パフォーマンスの度に、毎回氷の上に足を踏み出す度に齎すものは、真実の喜びである。最高峰の芸術性と曲への深い理解。そういった面を彼女は今年のStars on Iceツアーの中で見せてくれた。

シズニーのコーチである佐藤有香とジェイソン・ダンジェンは、シズニーのキャリアの中で重要な役割を果たしてきた。スケーティングテクニックは勿論のこと、彼らはシズニーの精神面の改善に対しても多く取り組んできたのだった。その結果、シズニーは変わることが出来た。逆もまた同様で、シズニーも多くの点でコーチ達に影響を与えたと言える。

『5位になった2011年のモスクワワールドからニースワールド(2012年。そこでの彼女は第22位)までは、上がったり下がったり、まるでジェットコースターみたいだったね。そしてここ2年は、彼女が受けた大きな手術からの回復を支えることに費やされてきた。』

『これまでずっと一貫していたのは、アリッサの良くなろうという意志だった。それは今も変わっていない。』とダンジェンは言った。

高いレベルの選手を指導するのは、彼にとってシズニーが初めての事だったとダンジェンは言う。学ぶのはスケーターだけではなく、コーチである彼もまた同じく学びの日々だった。

『自分と教え子とがチームとして上手く行ったなら、可能性は無限になるということを教えてくれたのはアリッサだった。そして私はコーチとして、どう逆境に対処するかも学んだ。状況がどれほど悪くても、もしスケーターが私が求めるもの全てを見せたなら、私は更に私の全てを彼らに注がなければならない。』

佐藤もまた、シズニーへの指導がどのような相互関係であったかを語った。

『彼女は美しいスケーターであるという事に加え、本当に献身的なスケーターでもあるのです。彼女からは本当に沢山の事を学びました。』と佐藤。『スケーターやアスリートとしての彼女の心構えは、私たちに自信をつけさせ、またそれを強めてもくれました。それは才能だけの話ではなく、私たちを成長させてくれた倫理についてです。アリッサはその良きモデルです。』

シズニーと彼女のコーチらにとって、一緒に過ごした時間からは主に楽しい記憶が思い出されることだろう。

『彼女は親切で愛情深い人です。そんな彼女と一緒に過ごせたことは、間違いなく名誉なことです。』と佐藤は語った。



Icenetwork: 1月に2014年中西部セクショナルの欠場を決めた後、あなたはショーなどでスケートは絶対に続けていきたいと言いつつ、将来についてはまだ未定であると言いました。その後、考えは変わりましたか?

Czisny: 予選に出場しないと決めた後はまだ、万が一コンディションが十分に回復し、更に改善することが出来たならば、次のシーズンも恐らく競技をすることが出来るだろうという望みを持っていました。でもアマチュアスポーツのとても困難な状況を目の当たりにし(そして自分が“若くはない”スケーターであるという事実も加わり)、これからは異なる方面でスケートを続けるのが良いのではないかという思いになりました。今も変わらずフィギュアが大好きですし、滑ること、パフォーマンスすることへの愛情に変わりはありません。この先、大会に出場しないことに関しては悲しく思っています---それは小さなころから私の生活の一部でしたから---でもこの先の新しいステージと、人生の新たな機会を楽しみにしています!


Icenetwork: オリンピックシーズンでこの様に難しい決断を下したことに関して、どう感じていますか?

Czisny: 2度の手術からの回復が全く思わしくなく、この(最後の)シーズンを戦うほど十分には良くない状態だということを認めることは、心が張り裂けるほど難しいことでした。オリンピックはあらゆるアスリートにとって最終目標ですし、最高到達点でもあります。その出場をかけて戦うことを諦めるということは、夢を諦めるということでもあったのです。


Icenetwork: 時に、有意義な生活の終わりにはポジティブな面があったりします。あなたの場合はいかがでしょう?例えば“もう朝早く起きてトレーニングに行く必要もなくなったわ”みたいな小さな事でも、何かありますか?

Czisny: そうね、確かに大会に備えて沢山の練習をしなくてもよくなった今、私には十分な時間がありますね!以前よりもリラックスすることが出来るし、他に興味のあることに時間を使うことが出来ます。

カリフォルニアに住む両親の元を訪ねたり、太陽を浴びてアウトドアを楽しんだり(ミシガンの友達たちが記録的な大雪を生き延びようとしている最中に!)。でも変化に慣れるのは難しいものです。トレーニングや競技に全てを費やしてきたのに、それが無い今の状況に慣れるのは大変です。毎日のトレーニングには満足感がありましたから、私はそれを恋しいを思います。でも人生は変化するものです。それは私たち全員に起こることですし、これから先に起こる新しい希望を受け入れる事が出来るのですから!


Icenetwork: フィギュアスケートに対する思いは、スケートを始めたころと比べてどの様に変わりましたか?

Czisny: 競技を始めたのはもうずっと前の事ですが、その頃は自分がここまで来るとは考えもしませんでした。アメリカのあちこちや世界の国へ行って滑る機会に恵まれ、沢山の人たちとこのスケートに対する愛を分かち合うことが出来、そして沢山の素晴らしい人たちと巡り合うことが出来ました。

小さな頃は、スケートはただ滑って楽しいというだけのものでした。成長するに従い、この大変なスポーツをこの先も続けていくか疑問に感じた時も、スケートそのものに対する愛情は変わりませんでした。実際に、フィギュアが私の信条と能力の限界を押し上げる可能性を与えてくれると解ったので、困難があってもフィギュアに対する私の愛情は増すばかりでしたから。時にフィギュアが私にとって厳しくても、それが私へのギフトであることを否定することは出来ません。なのでそれを皆さんと共有することに誠実でいたいと思っています。フィギュアからは、この先もずっと私の胸に残り続ける素晴らしい経験と思い出も得ることが出来ましたしね!

そしてこの2年半は私の人生でも最も困難な時でしたが、この経験から得たものに感謝をしていますし、この全ての時を通して私の傍にいてくれた全ての人たちに、心の底から感謝をしています。彼らのサポートは私にとってかけがえのないもので、私の人生に彼らがいてくれた有難さは、言葉では言いつくせないほどです。


Icenetwork: 昨シーズン、あなたはある意味観客であったと言えますね。ソチオリンピックについてはどういう印象を持ちましたか?また他の大会については?

Czisny: 正直に言うと、昨シーズンは大きな大会を全部見ていたとは言えません。勿論、トレーニングメイトや友達の応援はしましたし、オリンピックの結果を見ることは楽しかったです。でもその時は私にとってスケート以外の生活を探索する機会でもあったので、大きな大会をじっくり見るようなことはしなかったのです。


Icenetwork: その中でも特に心に残ったパフォーマンスはありましたか?

Czisny: 好きなパフォーマンスの一つはジェレミー・アボットの世界選手権でのFSです。彼は私のトレーニングメイトですから、思い入れもあるのでしょう。毎日彼の滑りを見て、私は彼の音楽を感じる能力に尊敬を感じています---まるで彼の動きが、魂からの彼の動きが音楽を奏でているかのようです。競技会で彼がプログラムを披露し、最大限の力で滑り、世界の舞台で彼の本当の可能性を示しているところを見るのは、とても素晴らしいことでした。


Icenetwork: 今年は再びStars on Iceツアーに参加しましたね。そこでの経験について教えて下さい。

Czisny: Stars on Iceは本当に楽しかったですし、今年もまた出演する機会に恵まれてとても嬉しかったです。毎晩お客さんの前でパフォーマンスすることは、私をパフォーマーとして成長させてくれますし、もっと上手になろうというやる気も起こさせてくれます。なので、これから先も沢山パフォーマンスし続けられることを願っています!


Icenetwork: ソーシャルメディアなどで発信されたショーの写真に写るあなたの幸せそうな様子を見て、私は時々不思議に思っていました。大変な時期にも上向きでいられるのは、哲学的、心理学的、そしてもしかしたら神学的に一体どういった考えを持っているからなのだろうかと。

Czisny: フィギュアスケーターとして、私たちは競い合いながら成長し、そしてスケーターとしての私たちの生活はフィギュアスケートの世界の中にあります---常にジャッジされることから成るスポーツの世界です---なので私たちは、パフォーマンスや競技の結果が、自分たちの信頼に直結しているという考えに簡単に陥ってしまうことになります。私たちは、結果が人間としての私たちを表しているものではないということを学ばなければなりません。ですが、結果に対して私たちが見せる反応は、私たちの本当の姿を映し出している物なのです。結果だけが私たちを定義するという考えから自分たちを解放するのは勇気がいることですし、パフォーマンスとは切り離して自分自身を定義することを学ぶことは、より勇気が必要になります。

私はフィギュアで最終的な目標は達成しなかったかもしれない---それに関して私は今ももがいたり、失敗してしまったような気持ちになったりもします---でも私は自分がどれ程チャンスや経験に恵まれて来たかを、決して忘れたくはありません。神は私に才能を下さいました。それを最大限に活かすのは私の責任なのです!心の底から好きなものをすることが出来、私に与えられたものをみなさんと分かち合えるのは、本当に嬉しいことです。私のキャリアには浮き沈みがありましたが、自分を成長させる為にその経験の一つ一つから何かを学ぼうとしました。勝利もありました。成功もしました。泣いたこともありますし、心が折れたこともあります。もがき苦しんだけれど、今は他の人生なんて望みません。そういった経験があって今の自分があるのですから。


Icenetwork: この先フィギュアスケートはどうなっていくと思いますか?

Czisny: 芸術的にも技術的にも、進化していくと思います。フィギュアは芸術性と技術性の両方を兼ね備えている。そういったスポーツは他には少しだけです。継続的に多方面に境界線を押し広げるのは、私たちの責任なのです。

現在のジャッジングシステムはスケーターの創造性を狭めるとの意見から、度々批判されていますが、それでも、要件を満たすだけではなく、競技の中で必須要素の枠をこえ、ユニークで美しいビジョンを作り上げているスケーターを私たちは目にしてきました。それと同時に、他には技術的な限界に挑戦し続けているスポーツがあります。なので私たちもまた、フィギュアの芸術性に重点を置きながらも、技術的限界に挑戦しなければならないでしょう。


Icenetwork: コーチ・アリッサ・シズニー、若しくは振付師アリッサ・シズニーにすぐにでも会えるでしょうか?

Czisny: 教えることは既にしていますし、若いスケーター達を指導することは本当に楽しいです。フィギュアからは沢山のことを学びましたので、それを次の世代のスケーター達が受け継いでくれるのは、嬉しいことですね。