東方の珠 -6ページ目

東方の珠

勉強できるコーナーになりたい。
世の中の成功者の言行を学んで、自分自身も成功になりたい。

「人は他人の才能や幸運をねたむが、他人の努力は素直に認める」といわれます。ユニ・チャームも53年前の創業時は、「人」以外の経営資源は何もない中から立ち上がり、塗炭の苦しみの中で努力を続け今日に至っています。  私は「人」以外にまともに資源のないユニ・チャームがどのような挑戦と失敗をくり返し、競合の品質を凌駕(りょうが)する差別化製品やサービスを作り上げてきたのか、その過程で何を考え、何を学んできたのか、その経験をもう一度振り返って学び直し、継承したいと思いました。それが「共振の経営」を実践する上で最も大切な「ものの見方・考え方」を記した「The Unicharm Way」や、週次でP(計画)-D(実行)-C(チェック)-NA(次の行動)を回し、業績達成と人材育成を同時実現する「SAPS経営モデル」を作り、これらを愚直に運用し続けている理由です。今回は「共振の経営」や「SAPS経営モデル」を策定した際に重視した私の人間観、仕事観をご紹介します。  SAPS経営モデルは「誰でも実行できる」かどうかを判断基準にして仕組み化や成功事例の横展開を推進しています。学校の勉強では、基本問題は簡単で、応用問題がむずかしいということになっていますが、ビジネスの現場では逆です。「応用はむしろ易しい」のです。なぜならば、いわゆる横展開だからです。もし横展開が難しい成功事例であるならば、それはもともと基本パターンとして持つべき要件の熟成が足りないのでしょう。このように原理原則や定石といった「基本を身につけること」がビジネスの現場では最も難しいと感じます。  基本とは、訓練して、訓練して、何度も訓練をくり返してやっと身につくものだからです。故に、基本ができている人は予想外の困難や環境変化に遭遇しても業績や成果の振れが少ないのでしょう。  そもそも最初は「人」しかない。そして最後も結局「人」で決まる。それでは「人」を育成する際の「基本」とはどのようなことでしょうか?

まず管理職になると、実際に自ら行動して成果を出す仕事から、自分の代わりに「部下が行動して成果を出す」という仕事になります。つまり、「人にがんばって働いてもらって結果を出してもらう」。これが「自分の成果」となる立場です。モノづくりの現場でも、自分ではなく人にモノを作ってもらい、品質や出来栄えを管理していくわけです。

 それを行うためには、第一に人と組織のマネジメントができなければなりません。つまり「自分が先」ではなくて、「部下と組織が先」にくるというのが管理職としての「基本」です。よってSAPS経営モデルでも「自分ができるのではなく、誰でもできる」ことを重視します。なぜならば、これが管理職と一般社員との一番大きな違いだからです。

 そして管理職は、組織が持つべき三つの要件である「共通の目標を作る。協働の意欲を醸成する。コミュニケーションの場を作る」を実践することができる人と組織を管理する能力をまず持たなければなりません。

 その上で現場は現場で「この課題はこういうやり方の方が現実的である」とか「こういうお取引先様にはこういう提案の仕方が成功しやすい」というような、メンバー全員のこれまでの経験や知識を持ち寄り、それを課やグループといった最も小さな組織単位で実施する「週次小集団SAPSミーティング」の場で共有する習慣を身につけ、業績向上と自身の能力向上に努めることが大切です。

 時折「この事業では、これ以上の売り上げ増や収益性改善は期待できない」、「この製品はこの業態では売りにくい」「このカテゴリーでこの価格は難しい」などと、できない理由ばかりを口にする人もいますが、同じ状況でもしっかり成功する人は必ずいます。その成功した人のノウハウをできるだけ多くの人と分かち合う、与え合う、そして「誰でもできる」内容に因数分解し、構造化・単純化することが重要です。それが週次で実施している「SAPS小集団ミーティング」の本来の姿です。この「SAPS小集団ミーティング」の場が「知識と経験を知恵=価値」に変えているのです。

 しかしながら実際には、SAPS小集団ミーティングで現状抱えている課題を解決しても、また次の週には新たな問題が発生して、またどうしたものかと悩みます。でもそれは、我々の究極の目標である「社是の実現」に向けて昨日よりも今日、そして明日の理想の自分へと「成長しようとする限り、新たな課題や悩みがでてくる」という自然な営みなのです。

そもそも、課題や悩みとは理想と現実のギャップです。ですから、理想が低ければ、課題を課題だと感じることもできず、逆に理想が高ければ高いほど、どんどん問題点や課題に悩むことになります。もしユニ・チャームが過去の成功に縛られて、自由な発想やチャレンジができずにいるとすれば、それはユニ・チャームの「理想や夢」が低く小さくなっていると私は考えています。

 同時に全社員が常に社是を本気で実現するつもりがあるかどうか、そのために最も大切な「人材」(自分自身を含めた)の成長を最優先に考えて行動しているかについて、自問自答するように指導しています。このように「人」の成長を何よりも重視している我が社では、自ら主体的に高い目標を設定し、数多くの失敗を経験することを奨励しています。

 白鵬関はもともとモンゴル相撲の選手でした。大横綱となった今日ではイメージしにくいことですが、当時はなかなか勝てずに悩まれたそうです。そんな時に白鵬関のお父様は「人は負けて強くなる」という言葉をかけたそうです。勝って強くなるのではなく、負けて強くなるのです。もちろん負けばかりでは会社は潰れますが、勝ってばかりでも会社も強くなりません。重要なのは「負けからしっかり学ぶ」ことです。この「負けからしっかり学ぶ」ことは、これからの強い会社や強い組織の「基本」だと思います。もちろん、実行するのは大変難しいですが。