2026年8月10日(月)

【天気】☀️晴れ
【日誌当番】鶯丸
【畑当番】小夜左文字・物吉貞宗
【馬当番】大包平・五虎退
【手合わせ】和泉守兼定・肥前忠広


今日は朝から、なんとなく本丸全体がそわそわしていた。理由は明白で、明後日から百鬼夜行本番が始まるからだ。対百鬼夜行強化プログラムもまだ続いているが、主はいつものように出陣の準備をしながら、手形や小判の残りを確認していた。

今日の経験値二倍対象は大太刀と槍。出陣したのは袮々切丸、太郎太刀、次郎太刀、日本号、石切丸、蛍丸の六振りだった。

昨日は手形を99枚買って一気に使った主だったが、今日は小判を使わなかった。昨日までの勢いを考えると、これはなかなか珍しい。

出陣から戻った六振りが食堂へ向かうと、日本号が「いやあ、今日は財布に優しい出陣だったな」と笑い、次郎太刀が「昨日使いすぎたんじゃないの?」と酒でも飲むような気軽さで言っていた。主は何も答えず、黙々と経験値を確認していたが、その目は明らかに数字を追っていた。明石国行は少し離れたところからその様子を眺め、「……まあ、使わんかっただけでも上出来やないですか」と呟いていた。


昼頃には、修行から帰ってきた宗三左文字を皆で迎えた。旅立つ前には小夜から折り紙のお守りを受け取っていた宗三だったが、帰還した姿には以前とは違う落ち着きがあった。


小夜は宗三の姿を見ると、少しだけ表情を和らげていた。宗三は手の中のお守りを見つめ、それから小夜へ返すのではなく、大切そうに懐へしまった。

「……持って帰ってきたのですね」と小夜が言うと、宗三は「ええ。置いてくる理由もありませんから」と答えた。素っ気ない言葉だったが、その声はどこか柔らかかった。

近くにいた歌仙兼定は何も言わず、ただ静かに二人を見ていた。こういう時、無理に言葉を足さないほうがいいこともある。兄弟が互いの存在を確かめるようにそこにいる。それだけで十分な時間だった。


しかし、感傷に浸る暇もなく、今度は加州清光が修行へ旅立つことになった。


つい先ほどまで帰還を喜んでいた本丸から、今度は一振りを送り出すことになる。加州はいつものように身なりを整え、最後まで自分らしく振る舞っていた。「ちゃんと可愛くなって帰ってくるから」と言い残す加州に、安定は少し困ったような顔をしながらも見送っていた。宗三もその場に立っていた。つい先ほど自分が迎えられたばかりなのに、今度は旅立つ者を見送る側になる。刀剣男士たちの時間は、こうして誰かが帰ってきたと思えば、また誰かが旅立っていく。季節の移ろいにも似ている。


夕方になると、主のもとへ今年の百鬼夜行本番の情報が解禁されたという知らせが届いた。全ての報酬を獲得しようとすると、なんと2000回の出陣が必要で、使用する小判は60万枚になるという。これを聞いた本丸の何人かは「2000回……」と遠い目をした。だが、主はしばらく情報を眺めたあと、ぽつりと「大したことないな」と言った。食堂にいた者たちが一斉に顔を上げた。

「……大したことない?」

誰かが確認するように呟いた。主は頷いた。去年の百鬼夜行で、もっと過酷な周回を経験しているからだ。2000回出陣、60万枚の小判。普通に考えれば決して小さな数字ではない。しかし去年の地獄を知っている主にとっては、「去年よりは大したことない」。その言葉には妙な説得力があった。大包平などは「そうだ!それくらいで弱音を吐いてどうする!」と妙に嬉しそうだったが、俺は茶をすすりながら「大包平、君は自分が2000回出陣とは言われていないからな」と静かに言った。大包平は「何を言っている!出るなら出る!」と答えた。俺は茶をもう一口飲んだ。こういう時の大包平は実に頼もしい。そして、実に面白い。

さらに、新刀剣男士のシルエットも公開された。

主はそれを見るなり、かなり嬉しそうな顔をした。「狐ヶ崎さん……」と呟いている。

狐ヶ崎。青江派の刀だという。主はにっかり青江と数珠丸恒次を好いているので、この知らせはかなり嬉しかったらしい。「青江が喜ぶ」とまで言っていた。

本人であるにっかり青江は、その横で何とも言えない顔をしていた。「へえ……僕が喜ぶと思ってるんだ?」と意味ありげに笑っていたが、主は「だって青江派だよ」と当然のように返していた。

数珠丸恒次も静かにその話を聞いていたが、「ご縁があるのでしたら、嬉しいことですね」と穏やかに微笑んでいた。青江派の刀が増えるかもしれないという話だけで、いつもより少しだけ本丸の空気が浮き立っている。


その一方で、畑では小夜と物吉が黙々と作業をしていた。小夜は収穫した野菜を丁寧に籠へ入れ、物吉は「今日はきっといい収穫になりますよ!」と明るく声をかけていた。少し離れた馬場では、大包平が五虎退に馬の扱いを熱心に説明していたが、説明が熱心すぎて五虎退が馬よりも大包平のほうを見ている時間のほうが長かった。手合わせでは和泉守兼定と肥前忠広が刀を交え、周囲にいた刀たちは少し距離を取っていた。二人とも口数が多いほうではないが、手合わせが終わる頃には互いに相手の力量を認めたような顔をしていた。


夜になり、加州が旅立った後の廊下を宗三が一人で歩いていた。自分が帰ってきた日に、別の刀が旅立った。そんな巡り合わせを何となく思ったのか、宗三はしばらく庭を眺めていた。そこへ小夜と江雪がやって来て、何も言わず隣に立った。三人はしばらく黙っていた。やがて宗三が懐のお守りをそっと確かめるように触れた。小夜はそれを見ても、何も言わなかった。


本丸では、誰かが帰ってくる。誰かが旅立つ。戦へ出る者がいて、畑を耕す者がいる。経験値を数える者がいて、小判を数える者もいる。そして、明後日からはまた百鬼夜行が始まる。2000回という数字を前にしても、主は去年の経験を思い出して「大したことない」と笑っている。なるほど、去年の地獄を越えてきた者の面構えは違うらしい。


さて、明日は百鬼夜行本番前最後の日。小判約400万枚を抱えた本丸が、果たして本当に「小判を使わない、つもり」を守り抜くのか。それとも経験値二倍の誘惑に負けるのか。俺は茶を飲みながら、その成り行きを眺めていようと思う。何しろ、明後日からは2000回の出陣が待っている。今日くらいは、静かに茶を飲んでいてもいいだろう。