私が中学の時に出来て、高校時代に普及した
レンタルレコードのありがたさは計り知れないものがあります。
レンタルCDになってからは、
歌詞カードとCD本体だけをソフトケースに入れて
貸すようになりますが、
レコード時代は、そのまま持って帰れたので、
ひと時ですが、自分のもののように思えたものです。
宝物のように丁寧に扱って、丁寧に聴いたものです。
いつかLP全部買うぞ・・・と誓いながら、
数年かけて自分に取り込んだ、Pink Floydの世界。
怪しく深遠で、謎がいっぱい。
私が思う音楽の定義を
根本から覆して、そっぽを向く。
私は懲りずにドアを開ける。
ドアに鍵はかけられていないし、音楽は絶えない・・・。
『 The Piper At The Gates Of Dawn 』/夜明けの口笛吹き (1967年)
デヴューアルバム。
これは、初代ギタリスト Syd Barrett の人となりを理解してこそ、
魅力的に聴こえるアルバムだと思います。
借りた当初は、1967年の英国ロック・シーンを
考えながら、
といっても資料なんてありませんから、
The BeatlesとかThe Whoとか
The Kinksなど
知ってるバンドの音を思い浮かべながら、
聴きました。
後に、1967年は
Procol Harumが 「 A Whiter Shade of Pale 」/ 青い影
でデヴューした年か・・・
なんて分かって、面白くなるのですけどね。
ジャケットを見て、
どれが誰なのか考えながら聴きました。
(Roger Watersはすぐ分かった^^)
ジャケットによるアシッド効果・・・というのは
あると思っています。
ほわ~んとした音と合わさると、
狭いところに閉じ込められて、
クルクル回されながら聴いてる感じになりました。
最初は辛いのですが(笑)
慣れてくると、心地良いアルバムです。
(それって危ない?)
コツというか、
Richard Wrightのキーボードと同調しながら聴くと、
聴きやすいです、私は。
アルバムタイトルが、
童話から取られているは有名でしょう。
英国童話の定番
『 たのしい川べ 』 の一篇です。
童話は小学生の頃からまあまあ好きだったので、
『 不思議の国のアリス 』 や 『 ピーターラビット 』などとともに、
『 たのしい川べ 』も図書室で読書済みでしたが、
その時は、タイトルとは結び付かなかったですね。
ちなみに、Van Morrisonのアルバム
『The Healing Game』(1997年)にも
同名曲があるのですが、
それはこの童話のことを、そのまま歌った歌です。
『 たのしい川べ 』 は、
とても素敵な友情話なんだけど、リアルな挿絵が私はちょっと苦手でした。
童話の中では、制裁を加える意味で残酷なことも平気で起きるので、
んな殺生な・・・と思ったし、
ファンタジーなんて信じない・・・って子ども心に警戒心を持っていたので、
そんな心の萎縮を思い出し、
大人になった今でも、
アルバムを聴いてるだけで、逆撫でされる気がするのです。
面白いと思うのは、
童話とはいえ、擬人化された動物が繰り広げる物語は、
後のアルバム
『 Animals 』につながると思うし、
実際、1988年の鬱のライブに行ったときに、
私の気持ちはモグラのモールだったのです。
・・・意味不明?
またライブの回で話しますね。
Syd Barrett ・・・
彼の心に映る景色は、彼だけのもの。
“共感覚”という特殊な感覚を持っていたというから、
想像の範疇を逸していたと思われます。
五感さえ危うい平凡な私には、
分かるはずもない。
『 The Piper At The Gates Of Dawn 』は、
今もたまには聴くけれど、
Syd Barrettの魂が宿ってる
唯一のPink floydのアルバムだと思うので、
あまり深く聴きすぎないようにしています。
このアルバムを気に入ったひとは、
間を入れずに
Syd Barrettのソロアルバムに向かうのが
いいでしょう。
『The Madcap Laughs 』/帽子が笑う・・・不気味に(1970年)
おすすめです。
David Gilmour も、Roger Waters も
参加していますし。
なにより、Syd Barrettの世界を捉えやすいし、
歌もいいです。
Please leave us here,close our eyes to the octopus ride ~♪
オクトパスライ~ド
軽快に歌いましょう。
『 A Saucerful Of Secrets 』 /神秘 (1968年)
David Gilmourが加入した2nd。
レンタルレコード店にリクエストして入れてもらった、アルバム。
リクエストするには200円くらいかかったんですけど、
お店が出来た初めの頃は、大体入れてもらえました。
引き続きサイケなんですが、
前衛音楽な不思議さが出てきて、面白いアルバムです。
社会人になった頃には、聴きまくってました。
中学生では、まだ無理でしたね。
その頃の私は、King Crimson がお気に入りで、
プログレ系をどんどん聴き始めていたので、
このアルバムの手ごわさは、ちょっとショックでした。
でも、せっかくリクエスト代まで払って借りたのだし、
つかみどころを探そうと思い、必死に聴きました。
でもでも、聴けば聴くほど怖くてね・・・。
とくにアルバムタイトル曲。
「Set The Controls For The Heart Of The Sun 」/太陽讃歌
もけっこう怖いですが、
これは私は気に入って聴いていました。
Roger Watersが
後にライブで定番曲にしてくれるので、
今は、そちらのほうが印象的になってしまってます。
下手なホラー映画見るよりも、
このアルバムを暗闇で聴くほうが、
想像力を養える点で、おすすめですね。
先日、ウルトラセブンのアーカイブ放送見てたら、
似たようなメロディが流れたけど、
偶然の一致でしょう・・・・・・きっと。
『 More 』/幻想の中に(1969年)
イビザ島を舞台に男女のドラッグ体験を描いた映画のサントラ。
10数年前に映画を見たので、その後は、
サントラとしか聴けなくなったのですが、
(いちいち場面が浮かぶのです・・・)
バラエティに富んだ楽曲集で、聴きごたえがあり、
中学生でも、とても気に入って聴いていました。
スルーされがちですが、
おすすめなアルバムです。
鳥の鳴き声にハモンドがかぶさり、
それだけで、ひとつの世界を作ります。
ヘヴィーな「 The Nile Song 」がいい。
Gilmour のヴォーカルがいいです。
アルバム全体的にも、Gilmour 味が感じられます。
『 幻想の中に 』は、残して欲しい邦題なんだけどなぁ。
今は、『 モア 』になってます。
ファッション雑誌と被るんですよね・・・。
『 Ummagumma 』/ウマグマ(1969年)
ジャケットが印象的で、
初めて見た時は、フェルメールを思い浮かべました。
(全然違うけど、構図かな。)
二枚組なので、
レンタルレコード店にリクエストしてもなかなか入れてもらえず、
一番後回しになったのですが、
結果、高校生になってから聴くことになったので、
それはよかったと思います。
一枚目のライブ盤がすごく気に入って、
何度も聴きました。
ユージンは怖かったけど、
(「Careful With That Axe Eugene 」/ユージン、斧に気をつけろ)
もう“ それこそがPink Floyd だ ” と理解した後だったので、
余裕をもって楽しめたアルバムでした。
「 Set The Controls For The Heart Of The Sun」 /太陽讃歌
オリジナルよりスペーシー感増し増しで、すごくいい。
ライブ体感したいなぁ・・・と思いました。
二枚目は、
メンバー各々のソロ作品、セルフ演奏集。
個性がバンバン発揮されていて興味深いのですが、
ライブの盤ばっかり聴いてたので、こちらの面白さに全然気づけず。
トータル的にもあまり聴いてなかったので、
今回、じっくりと聴くいい機会になりました。
メンバー各々の才能がよく表れているので、
それを意識しながら聴くといいと思いますよ。
Richard Wrightによる組曲「Sysyphus」が、
現代音楽してて、私は楽しめます。
『 Atom Heart Mother 』/原子心母(1970年)
有名タイトル、有名ジャケット。
Pink Floyd の出世作。
プログレッシヴ・ロックの定義的アルバム。
A面全部が「Atom Heart Mother」という組曲で、
長いですが、
パーツを組み合わせた感じなので、けっこう聴きやすい。
ブラスアンサンブルで仰々しくスタートするところや、
SEがじゃんじゃん挿入されるあたり、とても面白いし、
David Gilmourのギターが鳴いてるあたり、たまらない。
ルルベル3世ちゃん (ジャケットの牛です) と目を合わせながら、
Pink Floyd の代表作として、
ロック・ファンなら聴いておくべき曲だと思います。
ライブ・バージョンになると、楽器編成が変わるので、
オリジナルと比較して、楽しくなります。
でも私は、断然B面のほうが好みなのでした。
「Fat Old Sun」/デブでよろよろの太陽
がいい。
Richard Wrightのハモンドがいい。
恋人たちの穏やかな午後のひとときって感じの歌詞です。
よろよろになっても聴くぞ~。
そして朝がきて、朝食を食べましょう。
「Alan's Psychedelic Breakfast」/アランのサイケデリック・ブレックファスト
朝食の風景をまんま描いた、具体音楽。
ちょっと長いけど、
面白い仕掛けが沢山あって、面白いです。
マーマレード 好きですか?
『 Meddle 』/おせっかい(1971年)
耳の拡大ジャケット。
ジャケットは開いて見てね。
『 おせっかい 』 という邦題が、
この不思議ジャケの出過ぎた感を増長させていて、
すごく面白いと思います。
私の持ってるこのアルバムのイメージはこんな感じ。
「One Of These Days」/吹けよ風、呼べよ嵐
で嵐がやってきて、
辺り一面ズタズタにした後、
穏やかさが戻り水たまりに虹が映ります。
そして、この耳と水たまりの波紋が、
「Echoes」のパルスと合致する・・・・・・
何かが始まる!!
緊張が走ります。
単独で聴いてももちろんOK。
「Echoes」は初めから、私のお気に入り。
大事な一曲。
どこがいいのかきかれても、答えられないのです。
Live at Pompeii
『 Obscured by Clouds 』/ 雲の影 (1972年)
初来日直前のアルバム。
レコードを借りて初めて
サントラなんだ・・・と知ります。
ジャケット裏の写真で、映画を想像しながら聴きましたね。
映画は今だ未見です。
初めてラジオで聴いた、あの瞬間がよみがえる
一曲目の「Obscured By Clouds」には、
今でもドキッとします。
Gilmourマジック!
サントラだけど、構えずに聴けば、
けっこう普通のフォーク・ロックに思えて、
聴きやすいので、
プログレに興味がない人におすすめです。
と、ここまでRoger Watersのことを、
ほとんど書いていませんが、
各アルバムを借りて聴いたのは
『 The Wall 』 を買った後でしたから、
彼こそが、Pink Floyd の核である・・・
ということは、もちろん分かっていました。
たぶんそれは、バンド名を知ったときから知っていました。
そんなふうに、雑誌が彼を紹介していたからです。
でも、
1stアルバムだけは、 Syd Barrett の
存在感がビシバシ来たけど、
あとは、メンバーの主張というのは、
まだよく分からなかったです。
しかし、次のアルバムは違いました。
Roger Waters のプランをもろに体感し、
必死でもがきながら自分なりに理解しようとした、苦しみの一枚。
『 The Dark Side Of The Moon 』/狂気(1973年)
世紀の大ヒット作品。
たまに行くスポーツクラブで、
このアルバムデザインのTシャツを着てる女性を見たことがあるけれど、
彼女がPink Floydを好きかどうかはあやしい。
たぶん、デザインだけが独り歩きしてるのだと思います。
黒Tシャツの胸元にぴったりなモチーフですし。
黒・・・というのが決め手だと思います。
理科の実験では、
日向の校庭で虹を作ったけど、
これは、ほんと小さな穴からの光を
真っ暗闇の中で受ける必要があると思います。
そう、イメージは“闇”ですね。
レコードを手にしただけで、震えがくるほど緊張しました。
見開いたなら、鼓動の波。
実際、針を落とせば、鼓動でスタートするので、
緊張感がまします。
ゆったりとした優しいギター音に包まれるのですが、
いきなり暗闇に引きずり込まれます。
「 On the Run 」/走り回って
シンセの音に、執拗に追いかけられます。
怖い、怖い。
続いて
ソウルフルな女性の声に
耳を塞ぎたくなる・・・。
「 The Great Gig in the Sky 」/虚空のスキャット
美しくて・・・やっぱり怖い。
B 面に行く前に休憩を。
CDでも、
ここはいったん止めて、休憩することをおすすめします。
なんで、こんな怖いアルバムが名作なのだろうか・・・。
B面。
ご存知「Money」からスタート。
7拍子を取りながらノッてみるけど、
怖いイメージは払拭できず。
「Us And Them」
が、このアルバムで一番好きなナンバーです。
この浮遊感こそが、私にとってのPink Floyd。
狂気の狭間で、
膝を抱いて眠りたい。
以後、どんどん追い込まれていきますが・・・。
「Eclipse」/日食・・・
このナンバーで
ああ、これは日食なのか。と、ホッとします。
陽はまた戻る・・・
“ 不安定な安心 ” をさせられて、全ては終わります。
助かった・・・という気持ち。
こんな気持ちになるアルバムは他にないでしょう。
なんで、こんな怖いアルバムが、今も売れ続けているのか。
それはたぶん、
「 聴くだけで自分と向き合えるアルバム 」 だからだと思います。
傍に置いておきたい一枚。
いざという時に聴ける幸せ。
狂気は、誰の中にもあるのです・・・。
私がこのアルバムを聴いたとき、
ちょうど
The Alan Parsons Projectの
『 The Turn of a Friendly Card 』/運命の切り札(1980年)
がリリースされ、
「 Time 」がシングル曲になったので、
両Timeを、私は同じ頃に聴いたんですよね。
ま、それだけですけど(笑)
クレジットに彼の名前を見つけて、
(狂気のエンジニアです)
おおっ!・・・と思ったのも、懐かしい思い出です。
『 Wish You Were Here 』/炎~あなたがここにいてほしい(1975年)
「あなたがここに・・・・」
某J‐POPや小説のタイトルなど、けっこう使われてるこの言葉は、
おそらくほとんどがこの邦題のコピーだと思われます。
ここにあなたが・・・ではないところがツボ。
ヒプノシスのアートワークといえばこれ!ってくらい
有名ジャケットですが、
LP時代は黒っぽいビニールカバーに包まれて売られていたので、
私は、雑誌に載ってた写真で、中のデザインを知ったんですよね。
レンタルではもちろん剥がしてあったので、
当時はあって当然だった太い日本語帯がなかったし、
味気ないジャケットに思えました。
「Shine On You Crazy Diamond 」/狂ったダイヤモンド
が初めと終わりに二分化され、
単体で聴いても魅力的な三曲を挟んだ、
でも、トータルすると地味な一枚。
気だるい感じが、
最初から最後まで漂い続けます。
歌詞はアレですが、
「 Have A Cigar 」/葉巻はいかが
が好きですね。
Gilmourのギターソロ・・・好きだなぁ・・・・。
中学生の私は、
詩とイラストを書く、内向的な女子だったので、
Pink Floyd が奏でる詩の世界にも、
影響を受けました。
「あなたがここにいてほしい・・・」
と日本語にすれば、
愛しい思いがあふれているようだけれど、
実はこれは過去形で、
Wish You Were Here
叶わないことが分かっている “ いてほしい ” なのです。
切ない・・・・。
ほんま、切ないです。
長時間Pink Floyd聴いてると、
さすがに疲れてきました。
もうちょっと先まで行きたかったですが、
この後から、
Roger Watersの怒りが露わになり、
アルバムの印象がガラッと変わってくるので、
ここでいったん中断して、気持ちを整えることにします。
では、次は来月に。