これが最後の、愛する命
かあさんは、3か月毎の歯医者さんのメンテナンスに行ってきました。
帰りに少しショッピングをして、わずか3時間足らずの外出ですのに、帰り着いたらどっと疲れました。
暑いです!
ビルの中や乗り物にエアコンが効いている分、灼熱の街路は熱帯かと思うほどです。
この猛暑の下、被災の跡片付けをなさっている皆様の、肉体労働はどんなにきついことでしょう。
どうぞ熱中症や二次災害にお気をつけられますよう、お祈り申し上げます。
ドアが開く音を聞きつけて、走ってきて、
かあさん、お帰りと見上げてくれるのは、この子だけです。
「弥生、スコットランドはエジンバラ発!」さんのブログよりご紹介します。
昨日の「ダッシュ」に続き、ウエスティのお話しです。
今度は前回の「否定」からではなく、「愛するゆえ」に虹の橋を渡った子のお話を。
カテゴリ:動物病院レポート ケースから
これが最後の・・・愛する命
https://scotyakko.exblog.jp/20594188/
月曜の午後。
エジンバラの8月は、もう秋の風が吹き始めていた。
14才のウエスティー(ウエストハイランドホワイト)のヘイミッシュ。
待合室の椅子の下で、静かに佇んでいる。
彼の首からリードで繋がる、その皺くちゃの手は、70代後半の男性。
Mr.S が彼を見つめている。
それが、ふたりの最後の数分であるのを、きっとヘイミッシュも知っている。
獣医師がドアを開けて、ふたりを診察室へと誘(いざな)う。
そして、数十分後には、年老いた Mr.S が独りで部屋を出て行く。
どうか自分を責めたりしないで
ヘイミッシュにとって、最善の選択だったのだから
獣医師の言葉に、大きな涙を幾つも廊下の床に落とす。
ヘイミッシュも知っていた。
最愛の人の、最愛による最高の選択にて …
人は叶えることのできない、けれど、愛された動物だけが与えられる …
その、最高に優しく幸せで苦痛のない、旅への出で立ちという切符。
そして、これも捨てて下さい
と、リードを獣医師に手渡す老人。
私は、この時、少し離れた部屋で、ただ声だけを聞いていた。
他の部屋で猫を抱いて、聞いていた。
Mr.S を、他人がいる待合室ではなく、病院の裏口から送り出した同僚 …彼女が、私に伝えてくれた。
Mr.S に聞かれたよ
あの、日本人の子は、今日はいないのか? って
私はよく、彼とヘイミッシュの話をしたものだ。
小刻みに震える手で、支払いをする間、色んな話をしたものだ。
ヘイミッシュの、真っ白い毛の、その犬の話を。
これが最後の、犬なんだよ
もう、新しい犬は迎えられないから
彼が最後の愛する命だったんだよ
そう、彼は同僚に言ったのだと …
彼女を泣かせたのだと。
年老いた彼を、やはり年老いた妻が待っているだろう。
ヘイミッシュの、青い首輪だけを手に持ち、玄関のドアを開けるのだろう。
そして、そこにはいったい、どんな思い出と月日が、待つのだろう …
優しく愛情深い彼らの上に、秋風は優しくあれと、祈るのである。
今日もお出で下さいまして、ありがとうございました。