教頭先生に促されて、C先生が口を開きます。

「太郎君は、本当に力のあるお子さんで、私は、太郎君の『できる』を増やしてあげたいんです。」

「頑張れば『できる』という経験をたくさんさせてあげたいんです。」

…なるほど。これか。
ずっと感じていたC先生とのズレがようやく分かりました。

「先生、ありがとうございます。…でも、できれば、頑張ることなく、自然に、ありのままで受け入れてもらえる環境が良いです。」

「もちろん、『できる』ことが増えるのは嬉しいです。太郎も嬉しいと思います。ですが、『できない』ことも受け止めて欲しいんです。」

「…太郎は他の子より頑張る事が多いんです。なので、太郎は絶対に頑張ってます。…頑張る事が悪いとは思いません。でも、C先生の頑張らせたい事と、私の頑張らせたい事は少し違うとおもいます。…上手く言えませんが…すみません。」

涙が出てきました。

でも、C先生とのズレの原因が分かり、それに対して私の思いを伝えられて良かった。

「…そうですね。太郎君がとても意欲的に取り組んでくれるので、私もたくさん、もっと、もっとと望んで、太郎君に無理をさせてしまっていたかもしれません。」

「…すみません。」


(沈黙)


「…今日はこうしてお話ができて良かったです。とても、前向きの良い話し合いができたと私は思います。」

「では、C先生は戻って頂いて、もう少しだけお母さん、お時間良いですか。」

教頭先生が上手いことまとめてくださり、C先生は退室されました。


「…さて、お母さん。」

教頭先生が私に向き直ります。