後ろから掛けられた声にがっくりしながら顔を向ける。


 「携帯にメールも電話もしたんだけどな~気がつかなかったのかな~」と、アピールするように携帯を右手で振りながら俺を見下ろすように睨む文子がいた。


 「いや、気づいてたけど無視してたんだよ」と、そうするのが当たり前だと正当性を持たせる為にその目を見据えて笑顔で話す。


 「そうだろうと思ったよ。で、そんな事で私が諦めるとでも?」と、勝ち誇ったような顔をする。


 「そう思ってたんだが、違ったようだね」と、俺はがっかりしたように“聞こえるように”答える。


 腕組みをしながら、まるで子供のいたずらを事前に発見した母親のように「あまいね~将樹の行動なんて元彼女の私にはお見通しだよ」と、フフンと言う効果音が似合いそうな顔をする。


 そう、こいつは『元』彼女だ、半年前に「私、将樹の彼女を続けていく自信ないから別れる」と一方的に別れを切り出された。


 たまたまその時に俺が好きなシリーズの映画がやっていたので会社の帰りに文子と見た後、夕食ついでに立ち寄ったマドクナルドでセットを頼み低コストを全面に出したような質素なテーブル席で、機械的に作られたアメリカンテイストの夕食を食べているときに、日常会話をするようなトーンでそう告げられた。


 「え?」と一瞬何を言われたかいまいちわからなかった俺に「そういうことだからよろしく」と肩を叩きながら“笑顔”で言った。


 「てか、なんでお前は別れた後もちょくちょく俺のところ来るんだよ」


 なぜかわからないが、文子は別れた後も多い時で週2回少なくとも2週間に1回は俺のところへ来る。この質問はこれまでに何度もしたことがある。


 その度に「え?いけない?」と、とぼけた様に言う。勿論今回も。


 いつもなら「はぁ」と俺がため息を吐いて終わりだが「ああ、いけないね、別れたのに会うってんなら別れなきゃいいだろ」と、俺はさも別れた事に納得がいってないように言ってみる。(実際納得は出来てないのだが)


 「将樹とは彼氏彼女ではうまくいかないけど友達ならうまくいくと思ってるからだよ」


 この問いにはこの答えを、と予め用意していたかのように間髪入れずに答える。動揺の欠片もない。


 しかし、今日の俺はまだ攻める「あ~そうですか、本当は俺の体が忘れられないだけだろ」と今度は俺がフフンと言う効果音(実際にはしないが)とともににやりとする。


 しかし文子は「そうだよ」と真顔で答える。


 「そうだよって・・・あのな・・・」


 俺が動揺してどうする。


 いやいやそうじゃなくて、そこは突っ込むところじゃないのか?そうなの?って間抜け顔で聞き返しそうだった。そんな俺の心境など知ったこっちゃない文子は「そんな事よりお腹減ったよ、ご飯食べに行こうよ」と言う。


 俺はお前のお腹事情なんて知ったこっちゃない。


 「いや、俺はいいよ、家で食べるから」


 なんか疲れたし、しかしそんな俺の気持ちなどお構いなしのこの女は「お~久しぶりに将樹の手料理が食べれるんだ!」とパンと両手を合わせ喜びの表現ですか、そうですか。


 「あのな~・・・はぁ」


 勝手にしてくれ、結局今日も俺のため息で終了する。


 なんなんだFFといい公園といい、せっかくの休日なのにどこに居ても心安まらない。ベンチから立ち上がり、リストラ宣告されたサラリーマンのようにうなだれて家路に向かう俺。その後を、何作ってくれるの?、と楽しそうについてくる文子。


 俺をかわいそうだと思うならこの女を攫ってくれ。うらやましいと思うのならこの女を連れて行ってくれ。




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あとがき


第4話です。


いやはや、6月後半は忙しすぎて更新がままならなかった。


7月も引き続き地元のイベントやらなにやらで忙しく更新頻度は落ちていくかと


少しずつ更新はしていきます。


弟も仕事の都合で今地元を離れていたりでねーよけい更新が出来てない。


さてさて、第4話なのにスタートしてから1日も経ってないという


なんてスローペースな小説なのか


ま、テキトーに読み飛ばしてくれてオッケーです。


それではまた


第5話は早めに更新できるようがんばります。