最近、ものの値上がりが大きい。私がたま~に行っている田町のマクドナルドの100円コーヒーも20円値上がりした。それでも、他の喫茶店の追従を許さない値段です。コーヒーの味に厳しい身近な人から言わせれば「これはコーヒーではない」と言うと思いますが、私にとっては立派なコーヒーです。がんばってほしいものです。朝の20分ほど、ここでコーヒーを飲みながら、音楽の本を読むのが私のささやかな楽しみなのです。

●音楽と言葉/T.G.ゲオルギアーテス-ミサの作品に示される西洋音楽の歩み/講談社学術文庫音楽と言語
最近、この本を通勤途中に読んでいます。まだ、全部読んでいませんが、いろいろと引き出しがある。「西洋音楽の歴史的名著」と解説に書いてあるが、確かにありきたりの西洋音楽史に無い知識が得られる。

T.G.ゲオルギアーテス
この著者の名前を見てびっくりです。まるでギリシアの哲学者のようですが、そのとおりギリシア人です。1907年にアテネで生まれ、1977年没で、ドイツの大学で教鞭をとったギリシア古代音楽から独特の視点を持った西洋音楽史の学者のようだ。

本の構成
1.序論
2.古代及びカロリング朝以前の時代
3.カロリング朝時代
4.中世盛期
5.14世紀と15世紀
6.パレストリーナ
7.モンテヴェルディ
8ドイツ語と音楽
9.シュッツ
10.器楽とJ.S.バッハ
11.ウイーン古典派
12.音楽的現実の諸段階
13.ロマン派
14.現代
15.歴史としての音楽

上記構成をみても、音楽史の区切りが独特なのが判る。副題が「ミサの作品に示される西洋音楽の歩み」なので、このような区分になるのだろう。でも、第2章は、音楽(music)の語源であるギリシア語の「ムシケー」から始まっている。この本を読んで、以前読んだニーチェの「悲劇の誕生」のギリシア悲劇の音楽の記述が少し判ったような気がした。でも、そもそも「カロリング朝」ってなんだろう。ここらが、世界史をまともに勉強しなかったツケが回っている。

カロリング朝
Wikiopediaで調べると、カロリングというのは「カール大帝(742年-814年、在位768年-814年)の時代と言う意味らしく、「マグヌス(偉大なる)」の称号を与えられたカロルス(カール)の名前に因んでいる。カール大帝は「800年に教皇により戴冠し、西ローマ帝国を復興し、カロリング朝ルネサンスといわれる時代を築いた。」らしい。

●音楽の時代区分
この著者の独特の音楽時代区分は下記です。
最古の時代
カロリングの時期まで。典礼用語がギリシア語からラテン語に代わる。ギリシア語の典礼音楽は、ギリシア正教のビサンティン教会の音楽として独自の歴史をたどったが、いわゆる西洋音楽には直接的な影響を与えなかった(らしい)。ラテン語による典礼音楽が、あの「グレコリオチャント」です。
第2の時期 
キリスト教的静養の中でゲルマン民族が決定的に関与したときから、16世紀の宗教改革と反宗教改革の時代。パレストリーナの音楽の時代まで。単旋律が主だったアルプス以南の西洋古代音楽が、以前から多声の音楽を持っていたゲルマン民族と融合して、音楽的発展を遂げたといっている(らしい)。
第3の時期
パレストリーナからベーとベンの死(ウイーン古典派の終結)まで。ここに、J.S.バッハが入る。著者は、バッハによって音楽の器楽化が完成したと言っている。ここのところは、改めて・・・。
第4の時期
現代まで。書かれているのはシューベルトのミサ曲、ストラビンスキーのミサ曲。著者の音楽観は、古代ギリシアからウイーン古典派の集結までは、歴史的弁証法的(発展)というか、新しい音楽の中に、それに先行する音楽が含まれていると言っている。また、その後の時代(ロマン派から現代)は、それ以前とは深く断絶していると言っている。(ブルジョワ)市民社会の台頭とここからでてきた新しい音楽は、共に「記憶の断絶」という特徴を持っている(らしい)。この本では「断絶」について詳しくは書かれていないが、いわゆる「神の否定」というのがあるのではないだろうか。

かなり大雑把な区分なのですが、なんとなく納得させられてしまう。解説に書いてありましたが、著者は哲学者ハイデッガー(1889年-1976年)と親交があったらしい。そのためか、音楽の歴史に対するアプローチは、まさにハイデッガーの「現象学」の手法に基づいている(ようだ)。

・・・とりあえず、ここまでと。
この本、続きます。