先週の日曜にバッハ全集第13巻を台東区中央図書館で借り換えしました。その中に首記の記事があります。興味があるので、(私の)記憶に残すため書き留めておきます。記事の要旨と私の感想とが混同していますが、後者は色を付けています。

●バッハの無伴奏ヴァイオリンおよびチェロのための作品/ライジンガー/江口直光訳
●バッハが得た最初の職はヴァイオリニストだった。
バッハは、オルガン職を探していたがかなわず、1703年にヴァイマルの宮廷楽団就職したのは、ヴァイオリニストとしてだった(期間は3ヶ月程のつなぎ)。そして1708年ヴァイマル宮廷に仕えたことも、著者(ライジンガー)は「ヴァイオリン奏者としてきわめて非凡な才能を持っていた」証拠としている。
●カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ(1714-1788)の書簡エマニュエルバッハ
以下はすべてC.P.E.バッハの言葉です。バッハはヴァイオリンやヴィオラも凄かったというのは、ひとつの楽器で苦労している私からするととても信じられない。
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「若いころから円熟期になるまで、彼(J.S.バッハ)はヴァイオリンを澄んだよく通る音で演奏し、それによってオーケストラを統率していた。チェンバロを弾きながらよりヴァイオリンを弾きながらのほうが、オーケストラの秩序は保たれていたと思います。彼はヴァイオリン属のあらゆる楽器が持つさまざまな可能性を完全に心得ていた。このことは、低音部のないヴァイオリンやチェロのための独奏曲が証明してる。」
●バッハの自筆楽譜
無伴奏ヴァイオリン組曲は、1720年の浄書譜が残っている。そこに「第1巻Libro Primo」と書き記されている。著者のライジンガーは「第2巻がかつてあったか、又は第2巻をまとめるつもりだった」と推測している。その、第2巻が無伴奏チェロ組曲ではないかと言っている。その理由は「1730年ごろに作成されたアンナ・マグダレーナの筆写譜には、無伴奏ヴァイオリン組曲と無伴奏チェロ組曲が含まれている」から。
●無伴奏ヴァイオリン組曲の自筆楽譜の特徴
当時の器楽作品にはアーティキュレーションの表記はわずかしかないが、バッハはスラーづけを非常に綿密に行っている。バッハが書き入れたアーティキュレーション表記は、ニュアンスの豊かな表記を可能にすし、演奏者に対する要求の高い作品のよどみない演奏を可能にする。
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一方、自筆譜が存在しないチェロ組曲は、この状況は致命的である。当時の筆写譜は4種存在しているが、その表記はどれも著しく異なっている。4つの筆写譜からバッハのオリジナルを復元しようとした試みは失敗したらしい。最近の演奏家は、現代譜よりこの4つの筆写譜のファクシミリ版を見て演奏する者も多い。
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ちなみに私のバッハのリュート曲の楽譜にもファクシミリがついていますが(一部はタブラチュア)、まともに音符を追ったことはありません。でも、最近になってアーティキュレーションの観点で、チェロやヴァイオリンの楽譜を図書館で借りて見ようと思っています(世界大音楽全集とかいった楽譜集が出ています)。
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なお、無伴奏の曲は、バッハが最初かというとそうではない。筆者は「バッハは若いころ、いくつかの無伴奏曲を知っていて学んだのではないか」と想像している。鍵盤作品は、他の作品の編曲により、技術上・作曲上の可能性を開拓したのが判るが、ヴァイオリンとチェロにはそれが無い。これは謎だ。
●カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ(1714-1788)の書簡
前記と同じ書簡の中で、C.P.E.バッハは当時のもっとも偉大なヴァイオリン奏者の言葉として「すぐれたヴァイオリン奏者になるために必要な教材として、無伴奏バイオリン独奏曲よりも完全なものを見たことが無い。学習意欲のある者にこの作品集以上にふさわしいものを勧めることはできない」と述べたと書いてある。

●現代のバッハ/鈴木秀美
同じバッハ全集13巻にこの記事がある。内容的に前者とダブルが、この記事はチェロ組曲のみについて書いている。
●鈴木秀美の回心
・・・それなりの「この曲はこうあるべき」という考えとして定着してきた。・・・、大学在学中に設立された古楽器科の人々と繋がりができ、理論的、資料的な裏付けをもって音楽に接する大切さと説得力をしるにつれて、そんな個人的で漠然としたイメージなどは木っ端微塵に吹っ飛んでしまった。
●ビルスマの言葉
古楽関係の人の中には、ビルスマの演奏をロマンティック過ぎるとか中傷気味に言う人がいる。・・・しかしながら、そのレコードの解説で言っている内容は新鮮だった。
「バッハの音楽、バロック音楽は歌うというよりも、むしろ言葉を語る音楽。・・・・・百人のオーケストラは一人のように響くとき素晴らしいと言われる。一人で弾く無伴奏組曲は百人のオーケストラのように響くのが素晴らしい」鈴木秀美は、カザルスは評価せず、ビスマルの演奏を評価している。それなら、ビルスマの演奏を一度聴いてみたい。
●隠れた声部
その後、鈴木秀美のバッハの無伴奏組曲から受ける「隠れた声部」の話になる。実は、私も無伴奏を弾いているとき、この「隠れた声部」が聞こえてくる場合があります。(私の場合は理解不足なので)意識していない声部が聞こえてくる。でも、そこがバッハを演奏する面白さです。
●無伴奏チェロ組曲のポリフォニー
チェロを無伴奏で弾かせるにあたって、無伴奏パルティータのように、楽器を限界まで駆使して複声部を盛り込むことをバッハはしなかった。・・・一種の擬似対位法を巧みに用いて、単旋律のなかから複声部、声部の重なりあいが聞こえるようにした。随所に見つかる美しい不協和音も実際には、同時に聞こえないことが多い。・・・。時に遠近法的な奥行きや陰影となって、この組曲に一層の深みを与える。

・・・・・ほんとうは、この後が鈴木秀美の演奏論でこの記事の中心です。そこが面白いのですがこちらも息切れで書ききれません。ここいらで・・・。

●主なきいたCD
●吉松隆作品集(廉価盤)
吉松廉価版で売っていたので購入しました。やはり1000円程度なら気軽に購入できるのでうれしい。印象は、以前図書館で借りた「福田進一/優しき玩具~吉松隆ギター作品集」に近い印象。そうそう、思い出しましたが、この「優しき玩具」にあるクロマティック・ハーモニカの曲の幾つかはは良かった。

●バッハ ミサ曲ロ短調/レオンハルト
図書館で借り換えしようとしたら、予約が入っていたので返却しました。少し残念です。やはり、この程度は自前で購入しよう。でも、だれのがいいんだろうか。

・・・ということで。