Come Rain or Come Shine
バリウムをしこたま飲まされたエックス線検診の日、あれだけ降っていた雨が夕方にはすっかりあがってしまった。
空腹に耐えかねて会社帰りに立ち寄った銀座の外れのラーメン屋。
その店に傘を忘れたことに、中央線に乗ってから初めて気づいた。
忘れ物というのは、なんだかヤキモキするもんだ。早く取り戻したい。
今日はもう戻れないけど、明日の早朝その店に行ってみようか。
それはまあいいけれど、明日は明らかに雨が降りそうもない。
そんな日にあのでっかい傘を持ち歩くことになる俺は、なんとも滑稽だな。
・・・なんてことを考えてるうちに、ふと学生時代のゼミ仲間を思い出す。
◇◇◇
僕と同じで貧乏育ち、奨学金組のヤナギは、僕とは違って実によく勉強する男だった。
彼は傘だけは立派なものを持っていた。
不思議なことに、彼がその鮮やかな青い傘を持ち歩く日に限って雨が降らない。そして彼が傘を持ってない日に限って強い雨が降ったりするのだ。
毎回そうだとは言わないが、そういう傾向があったことは事実である。
しかしヤナギ本人に悪びれた様子はない。
この傘は上京する前に福島のオフクロに持たされたものでお気に入りなのだ。だから、晴れたら晴れたで、この傘を持つのは嫌いじゃない。
そんなようなことを彼はよく言っていた。
そう聞くと、彼と青い傘が妙に似合ってるように見えてくる。
傘を片手に持つヤナギは、なるほど、なんだかとてもおしゃれだった。
あいつ、いまどうしてるのだろう。
◇◇◇
翌朝出社前に昨日の店に行ってみた。予想どおり、生真面目そうな店主が早くも仕込みの真っ最中である。
鬼気迫る表情で寸胴鍋に向かう店主に気づいてもらうまで、全部で3回も大声を出さなければならなかったが、ともかく傘は無事に僕の手元に帰ってきた。
そして自分は、思った通り、銀座の空の下、傘を持って歩くことになった。
ひとしずくの水滴も落ちてこない空の下を。
それどころか、汗ばむような暑い日だ。
けれども、ヤナギのことを思い出したせいか、晴れた日に傘を持って歩くのも悪くない気がした。
人生はつまらないけれど、こんな他愛もないことが嬉しく、幸せだったりする。
空腹に耐えかねて会社帰りに立ち寄った銀座の外れのラーメン屋。
その店に傘を忘れたことに、中央線に乗ってから初めて気づいた。
忘れ物というのは、なんだかヤキモキするもんだ。早く取り戻したい。
今日はもう戻れないけど、明日の早朝その店に行ってみようか。
それはまあいいけれど、明日は明らかに雨が降りそうもない。
そんな日にあのでっかい傘を持ち歩くことになる俺は、なんとも滑稽だな。
・・・なんてことを考えてるうちに、ふと学生時代のゼミ仲間を思い出す。
◇◇◇
僕と同じで貧乏育ち、奨学金組のヤナギは、僕とは違って実によく勉強する男だった。
彼は傘だけは立派なものを持っていた。
不思議なことに、彼がその鮮やかな青い傘を持ち歩く日に限って雨が降らない。そして彼が傘を持ってない日に限って強い雨が降ったりするのだ。
毎回そうだとは言わないが、そういう傾向があったことは事実である。
しかしヤナギ本人に悪びれた様子はない。
この傘は上京する前に福島のオフクロに持たされたものでお気に入りなのだ。だから、晴れたら晴れたで、この傘を持つのは嫌いじゃない。
そんなようなことを彼はよく言っていた。
そう聞くと、彼と青い傘が妙に似合ってるように見えてくる。
傘を片手に持つヤナギは、なるほど、なんだかとてもおしゃれだった。
あいつ、いまどうしてるのだろう。
◇◇◇
翌朝出社前に昨日の店に行ってみた。予想どおり、生真面目そうな店主が早くも仕込みの真っ最中である。
鬼気迫る表情で寸胴鍋に向かう店主に気づいてもらうまで、全部で3回も大声を出さなければならなかったが、ともかく傘は無事に僕の手元に帰ってきた。
そして自分は、思った通り、銀座の空の下、傘を持って歩くことになった。
ひとしずくの水滴も落ちてこない空の下を。
それどころか、汗ばむような暑い日だ。
けれども、ヤナギのことを思い出したせいか、晴れた日に傘を持って歩くのも悪くない気がした。
人生はつまらないけれど、こんな他愛もないことが嬉しく、幸せだったりする。