サマンサ・サマンサ | ちいさな、おはなし。

サマンサ・サマンサ

エレベーターに乗り込み、ふと気づけば目の前に本物の魔女がいた。黒い服に邪悪な香水がプンプン、年の頃は自分と同じくらいか。

しかしなんといっても彼女の履いてた黒い三角形の靴!

先っちょがゴンドラみたいに反りかえって、これはもう魔女でなくして誰が履く?といった風合いのものであった。

つい先ほどまでの疲れ果てた絶望的な気分はどこへやら、僕はもうすっかり子供の頃に戻った気分で、ワクワクしながら魔女の後姿に見とれていた。


こちらを振り返ったらどんだけ怖い風貌なんだろう?


なんて考えてるうちに、何時の間にか1階である。


扉が開く。


魔女、『開』ボタンを押して、こちらを振り返る。

つまり、お先にどうぞ、と。

丁寧に礼を言い、僕、先に出る。


そして、魔女を一瞥する。


魔女、満面の笑み。


魔女、超いい人、いい笑顔。


魔女って言ってごめん。


でもこれだけは聞きたかった。



その靴いったいどこで買ったのさ?