Rain | ちいさな、おはなし。

Rain

幸せを感じる瞬間なんていくらでもあるものだが、
問題はそれが長続きしないことだ。

人生たるもの、もう、ふざけんなよと叫びたくなるくらいに絶妙なタイミングで「幸せ感」は逃げてゆく。


そんでもって、また次のそれが訪れる。

訪れてくれたのだから、それはそれで嬉しいし、ともかくその新しい幸せ感に浸るまでだ。
しかし、やがてそいつも去って行ってしまう。

一喜一憂である。


なんだってまた自分はこうも振り回されているのだろうか。


泰然自若として、訪れては過ぎてゆくそいつらのことを右から左に眺めていればいいものを。


達観した人は、たぶんこう言うだろう。

ずっと続かないからこそありがたみが分かるんだよ、みたいなことを。

しかし残念ながら自分は達観していない。

ありがたみは十分わかっているから、せめて目の前のこのささやかな、
ほんのささやかな幸せだけは、途切れることなく死ぬまで続いてほしい。

そう願わずにはいられない。

そう思って何が悪い。

なーんていう自分の思いを阿部昭の私小説風に書くことができたらいいな、

と妄想した、雨の一日であった。

阿部昭。初めてちゃんと読んだけれど、不思議な小説家だ。

僕の日記の原点になっている、とある漫画があるのだが、その漫画の主人公がこの人の小説を読みふけるシーンがある。そこで初めて僕はこの小説家のことを知った。
湘南に住み、そこでの毎日を淡々と語る。なのに小説。
なぜ「単なる日記」ではなくて小説とされるのか、そこを知りたいところだ。
ともかく、世の中、いろんな書き手がいるものだ。
3人の息子を残し、若くして亡くなってしまったが、彼と3歳の息子とのやりとりの描写など、淡々としていながらも実に味わい深い描写がなされている。