新宿にて | ちいさな、おはなし。

新宿にて

深夜のラーメン屋で偶然隣どうしになった酔っぱらい男に、

「この店繁盛してるけど、どこがそんなにいいんすかね?」

などと話しかけられても、笑顔で返すゆとりなんてない。
そこで申し訳ないとは思ったが、思い切り無愛想に

「チャーシューじゃないっすかね。」

と答えた。本当に申し訳ないと思ったが、相手の目を見ることもなく。。。
なにしろ誰とも話したくなかった。

「ああやっぱそうか!この無意味にでかいチャーシューが目当てなわけだ。そんでおたくはどっから来たの?」

質問の意図が分からなかったが、あっちの方から、と適当に答えた。

「あっちから?俺、こっちから(笑)」

めんどくさいので、彼に一杯ついでやった。

ヤツが急にしおらしくなったように見えたので、

「無意味にでかくてもいいじゃねえかよ。それがこの店の取り柄ならいいじゃん。つーか無意味じゃないんじゃねーの?」

と言ってみた。ただ。。。
なんだかきれいごとを言い過ぎたような気がして、

「まあ、でもたしかにちょっと高いよね。」

などと付け加えた。

ヤツは黙って聞きながら、注がれたビールをチビチビと飲んだ。
僕も黙る。


何人かの気がかりな人のことが浮かんできては、ぐるぐる回る。
最近気づいたのだが、こういうときの自分の頭の中は、
まるでiPodやiTunesのカバーフローのようだ。
気がかりな人の顔や仕草がCDジャケットのようにパラパラと浮かんできては消えてゆく。

ある人には今以上の愛情をあげたいし、
ある人とはもう一度かつてのような良き関係を築きたい。
ある人にはその力になりたいし、
ある人には助けてほしい。
ある人には自分が裸の王様であることに気づいてほしいし、
ある人にはみんなから真に愛されていることを教えてあげたい。

そういうことを考えながら、頬杖をつくということがなんとなくしっくりくるような気がして、頬杖をついてみる。
似合わないことは分かっているので、すぐにやめる。


隣のヤツはうとうとしていた。
以前にも似たようなシチュエーションがあり、その人物は泣き出したことを思い出した。
今日のこの彼は、泣くよりも疲れていたらしい。

起こすのはやめて、店を後にした。