Isn't She Lovely | ちいさな、おはなし。

Isn't She Lovely


向こうから、泣き出しそうな顔をした痩せっぽちの中年男が歩いてくる。

何が哀しいのか、何が辛いのか。僕には分からない。

けれど分かることがある。
他人は鏡。彼は僕自身だ。

もう一度顔を上げよう。笑っている人物と出会うために。

◇◇
面会時間の終わりが近づくと、たとえ読み聞かせの途中であっても純は、
「おんがく、きく」と言う。

そして「でんき、けす」と続ける。

これは「おやすみ、パパ」という彼女の合図だ。

彼女の左耳にiPodのイヤホンを挿してやり、子ども番組などの音楽を流す。
やるせない気持ちでその愛くるしい顔を眺めていると、ほどなくして彼女は眠りにつく。

イヤホンをそっと耳から外してやり、
音をたてないように気をつけながら、帰り支度をする。

いつも心でつながっている。固い絆で結ばれている。
それが分かっていながら、なぜこうもさびしいのだろう。
しかしそれが親子というものだ。最近になってそれが痛いほど分かった。

子どもは親を成長させるために生まれてくるという。
なるほど、そういう側面があるのは確かだ。
だから自分は成長しなければならない。それは分かっている。

でもね。さびしいものはさびしい。
それが親子というものだ。

Isn't She Lovely / Stevie Wonder
http://www.youtube.com/watch?v=b2WzocbSd2w&feature=related