空を、突き刺すように。 | ちいさな、おはなし。

空を、突き刺すように。


西日が差し込み始めた社長室にボスとともに入り、
この2ヶ月をかけて必死で作り上げた分厚い書類の束を見せながら、
我が社のトップに趣旨説明をした。

いつもどおり極めてクールにうなずく社長は、
こちらの説明終了とともに、実にあっさりと、

「うん、まあいいでしょ」

と、宣(のたま)った。

正直、この人、この話を理解してない(笑)

虚しいけれど、こういうことには慣れっこなので、とにもかくにも
「2ヶ月かけた仕事が5分で終わった」ことを喜ぶことにした。

それに、この一週間というもの、僕の心はずっと会社の外にあった。

◇◇
先日長男がはなった、信じがたい飛距離の三塁打のことが頭から離れなかった。

かつて僕以外の誰からも褒められず、僕以外の誰からも期待されなかった彼が、
自分自身の力で活躍してみせたのだ。

本当にすさまじい飛距離だった。100メートルは飛んだかもしれない。
そして、空を突き刺すようなその打球の速さと勢い。

足が速い子ならば本塁まで戻って来れたのだろうが、
それでもなんとか三塁までは走り、ベース上でこちらを振り返る彼を見て、正直、涙が出た。

あとで聞いたら、病気の妹のために打ったのだそうだ。
母の日のことだったから母親のために一発狙うなどと試合前に言っていたが、
やっぱり妹のほうが優先順位が高いと考え、途中で目標変更したらしい。

その後試合はまさかの大逆転を許し、最終回の攻撃の時点で5点差を付けられていた。
しかし僕たちコーチ陣が諦めなかったように、子どもたちも諦めなかった。
コツコツと2点返し、息子もフォアボールで出塁した。
4番がまさかの三振に終わり2アウト。
しかし。。。

息子の親友、マコトが、
息子のさきほどの打球とまったく同じ方向にまったく同じ飛距離の打球を、あまりにも空高くかっ飛ばしたのだ。

走者一掃。

大逆転勝ちであった。

明日、彼らは2回戦を迎える。
これに勝てばベスト4だ。

この子たちと一日でも長く大会を闘いたいと思う。